人を上辺だけで決めるのは良くない。

俺は、もう少しで決めつけそうだった…―――





鳳side



蓮杖さんって、何だか不思議な人だなぁ…。
さっきのギャラリーの人達に言い返したときはとても怖い人だと思ったけど、
この手首の事…宍戸さんも気付かなかったのに。
宍戸さんの足首の事も、俺は全然気づかなかったのに。
どうして蓮杖さんは分かったんだろう?


「…はい、これでよし」
「あ、ありがとうございます」


湿布貼ってくれたし、お礼は言わないとな…。


「これくらい当然でしょ?お礼なんか言わなくていいわ」


お礼を言った時の蓮杖さんの顔…。
一瞬だけ、驚いたように見えた。
どうして?
お礼を言うのは当然ですよ?


「じゃ、今度は怪我しないようにね、帽子くんに、でかい子」
「…あの、名前で呼んでください」


気づいた時は、そう言っていた。
何故か…名前で呼んで欲しいと思った。


「………忘れた」
「はぁ…。俺は鳳長太郎です。今度は覚えてくださいね?」


素っ気無い返事に、宍戸さんは腹を立ててるみたいだけど、俺は覚えてほしくて、そう言った。


「はいはい。分かった」
「…ほら、宍戸さんも」
「…俺も言うのかよ?」
「そうです」


宍戸さんは、多分蓮杖さんの事を嫌な風に思ってるでしょう。
でも俺は…蓮杖さんのこの性格は、本当では無いと思うんです。


「……宍戸だ」


それを、宍戸さんにも分かって欲しい。


「んー…鳳に宍戸ね…多分覚えてるわ」


…今度から、ちゃんと呼んでくれるかな?


「それでは、さようなら」
「ん、さようなら」


言葉を返してくれた事に、少し嬉しかった。





蓮杖さんが行った後、俺は宍戸さんに聞いてみた。


「宍戸さんは、蓮杖さんのことどう思いますか?」
「……好かねぇ奴」


…やっぱり。


「俺は、いい人だと思います」
「いい人ぉ?…あいつが?」
「はい」


…宍戸さんは彼女の上辺だけしか見てません。
俺も…彼女の事は全然知りませんが、もっと中身を見たいです。