挨拶をされたら、挨拶を返す。
これは、礼儀。

礼儀の出来ない人は
人間として、出来ていない……―――





さて、湿布も持ったし…。
…あ、居た…帽子にでかい子…。


「そこの帽子くん」
「……俺か?」
「そう。ちょっと右足首見せて」
「はぁ?何でだよ」
「練習してたとき…捻ったでしょ?」
「えっ?そうなんですか?宍戸さん」
「…これくらい何でもねぇよ」


足、少し引きずってるくせに。
……私と関わりたくないって思ってるのかしら?


「関わりたく無いのは分かるけど、悪化したらどうするの?ほら、座って」
「っ…、分かったぜ」


私は近くのベンチに帽子を座らせた。


「んー…そんなに赤くないわね。じゃあ湿布貼るから」
「…俺、全然気づきませんでした…」
「捻ったくらい、って思ってるだろうけど、小さな怪我でもなめない方がいいわよ」
「…じゃあ、行くぜ」
「ちょっと待った。そっちのでかい子、あんたも右手首捻ったでしょ」
「…え?何で知ってるんですか?」


これくらい分からないと、何の為のマネか分からないでしょ?
…ま、あっちは違うみたいだけどね。


「…傍から見てると分かるのよ。ほら、見せて。……はい、これでよし」
「あ、ありがとうございます」
「これくらい当然でしょ?お礼なんか言わなくていいわ」


なんて、かっこつけてるみたいだけど、本当の事。
それに…お礼を言われるなんて本当に久ぶりだし…。
少し、照れ隠しも混ざっているみたい。


「じゃ、今度は怪我しないようにね、帽子くんに、でかい子」
「…あの、名前で呼んでください」
「………忘れた」


だって、覚える気全然無いし?


「はぁ…。俺は鳳長太郎です。今度は覚えてくださいね?」


うん。この子は礼儀ってのをしっかり分かってていい子ね。
……こういう子、久しぶり。


「はいはい。分かった」
「…ほら、宍戸さんも」
「…俺も言うのかよ?」


あら、凄いやる気の無さ。…私も人の事言えないけどね。


「そうです」
「……宍戸だ」


でも、私と違って素直ね。


「んー…鳳に宍戸ね…多分覚えてるわ」
「それでは、さようなら」
「ん、さようなら」


挨拶は礼儀だもんね、いくら面倒くさがりの私でもしっかり返すわよ。
さて、湿布も貼ったことだし部室にでも戻ろうかな……。


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