人が何を考えてるかなんて、分からない。

だから、私は私だけを頼る。

人なんて、信用できるものじゃない―――





「咲乱、少しは抑えろ」


私は今ベンチで跡部と話してる。
…余計反感買うの、分かってるのかしら?


「無理。私、思ったことすぐ口に出るから。
 …それに、大勢の奴等に一度に言った方が何回も言わずに済むでしょ?」
「…レギュラーが居たからか?」
「そう。いくらレギュラーでも興味のある奴と無い奴と分かれるから」
「…ま、好きにしろ」
「そうする」


跡部は何か仕事があるみたいでどこかへ行った。


「さて…それにしても、テニス…こんなに近くで見るの久しぶりかも」


前は…近くになんて絶対来れなかった。
…ていうか、練習より他の事をしてたんじゃない?


「……あ、今帽子が足捻った」


これでも結構マネとしてあの人には優秀って言われたのよね。
…でも、今ではその言葉も嬉しくない。
あの人が、あんな人だったなんて。
……まぁ、これくらいの怪我はすぐに分かる。


「あ……次はあのでかい子がサーブで手を…」


サーブは速くする分、力込めないといけないし…。


「…まだまだね」


ま、あいつらよりは大分いいと思うけど。


「……後で湿布でも渡そうかしら」


…初めは面倒と思ってても、やり出すとあの頃の感情が蘇ってくる。
懐かしい……なんて、柄にもなく思っているのかしら。


「…そろそろ終わる頃だし、今のうちに取りに行った方がいいわね」


ベンチから立って部室に行く。


「…えーっと…救急箱は…あ、あった」


流石、結構道具揃ってるじゃない。


「あー、またドリンク作らないと…」


私はドリンクをまた作り、さっきのベンチに戻った。


「集合!」


…丁度練習も終わったみたいだし、早いとこ渡そう。


「はい、ドリンク」
「あぁ?ドリンクは練習の合間だけでいいぜ?」
「……あ、そっか」


ここはあそこじゃないんだ…。


「ま、でも一応疲労回復用だから、飲んどいて損は無いわよ?」


そうして皆にドリンクを渡す。


「…お前、前はどこの学校だったんだ?」
「……それを知るのなら私の過去を知ることになるわ」


それがどういうことか、分かるわよね?
跡部…あんたなら。


「俺は、お前の過去を知りたい」
「…却下。私は誰にも話す気なんかないわ」
「………」


さて、じゃあ私は帽子とでかい子に湿布を渡しに行こうかな。