これでいい。
これがいい。
これしかだめ。

似ているようで、違う言葉……。

私の感情は、一体どれ……―――?





他の仕事は特に無い…か。

パコーン。

…ちょっと練習の様子でも見ようかな。
コート付近のベンチに座ると、フェンス越しから声が聞こえてきた。


「何であいつが…?」
「どうして居るの…?」


さっきまでうるさいほどキーキー言っていた言葉が一瞬にしてなくなる。
そして、不信に思う言葉が飛び交う。
ああ…うるさい。


「…ちょっと、何であんたがここに居るのよ!」
「そうよ!あんたがここに居る意味なんてないわよ!」


うわー…醜い嫉妬心むき出し。
恥ずかしくないのかしら?
そんな大声で叫んで。


「早く出て行きなさいよ!」
「邪魔なのよ!」


そんな風に叫んで、それが部活の邪魔をしているって自覚してないのかしら。
……そろそろレギュラーの表情も変わってきたわね。
人気が高いのも考えようね。


「うるさい」


私の一言で結構静かになった。


「私が何をしようがあんた達には関係ないでしょ?アンタ達に邪魔って言われる筋合いはどこにも無いわ」


普通に話しているのに結構響く。
あら?レギュラーまで唖然とした顔をしてるわね……。
ま、これで変に寄ってこられずに済むなら楽だわ。


「それでも言いたいのならこっちに来なさい。そんな所で叫ばなくても聞くだけ聞いてあげるから」


まるで挑発をするかのように人指し指でくいくい、とやった。
それに頭にきたようにギャラリーの表情が変わっていった。


「…おい、それくらいにしろ」
「…そうね。これくらい言えば流石に分かるだろうし?」


私はギャラリーからコートに目を移す。
レギュラーもはっとしたように練習を再開した。

そう、そうやって、テニスの事だけに熱中して。
他の事なんて、見なくていいのよ。
一度別の事を見たら、最後まで見てしまう事になる。
そんなの、私だったら耐えられない…。

あんた達は、あいつらみたいにならないで……。