貴女一人の存在。

自分では、ちっぽけだと……
いらないと思ってるかもしれない。

でも、貴女が、人の気持ちを変えていったのよ。
様々な方向へ―――





愛美side



「あんたの所為で、だんだんと青学の気持ちが愛美から薄れていくのが分かった」


始めはまた前みたいだった。
でも、あんたが変わっていて。
思いもよらない味方がいて。
こっちまで変わってしまった。


「……それだけは嫌だった」


一人になりたくない。
寂しさを知らないから。
皆と居たい。
いつも中心にいたから。


「周りが敵だと分かると、もうどうでもよくなった」


だから、後半からは味方にしようなんて考えなかった。


「………愛美、今のが全部…お前の本当の気持ちなのか……?」


部長が確認するために聞いた。


「……何度も言ったわ。これが本当の愛美よ。貴方たちを、ずっと騙していた」


だからって謝罪なんてしない。
貴方達にだって、悪い部分はある……。


「……愛美先輩……」


桃ちゃんがじっと愛美を見てくる。
次に、貴方は何て言う?
今までよくも騙してくれたな。
お前の所為で。
そうやって愛美を……罵倒する?



「……言ってくれて、ありがとうございます…!」



――――――――え?


「愛美……。やっと、本当の事を言ってくれた……」


英二まで、嬉しそうな顔になった。
その目には、少しの涙が見える。
どうして?


「……俺たち、薄々気付いてたんス…」


気付いていた……?
一体、いつから……。


「俺は……咲乱先輩が自分を傷つけた時に……」


……その後、皆の雰囲気が暗いと思っていた…。
もしかしたら、それで……。


「……俺も、同じくらい。……でも、気付いても、愛美の事大好きだからさ……」


英二が愛美に歩み寄る。


「だから俺達は愛美から離れなかった。……でも、だんだんと愛美から笑顔がなくなっていって…。だから俺達は……」


桃ちゃんと英二がばつの悪そうな顔をする。


「愛美に、幸せになってほしくて…」
「咲乱先輩さえ、居なくなれば……」


ああ、分かった。
あの時の行動だ……。


「俺達は、俺達の幸せを望んだんだ……」
「……もう、咲乱先輩とは元に戻ることができないから」


青学の皆も、自覚していたみたい。


「……あの時、心から咲乱を嫌ってなんかいなかったんだ……」
「……むしろ、凄く後ろめたかったッス…」


この二人も、自分たちの気持ちを押し殺したのね―――


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