貴方を思う気持ちから芽生えた。
単なる、八つ当たりかもしれない。
でも、それしか術がなかったの。

あいつを、貴方から遠ざけるには―――





愛美side



静まり返った空気の中、愛美の声だけを聞いている皆。


「……愛美は、恋をしたの」


この言葉に、ピクリと動いた青学。
もう、相手は分かってるわよね。


「周助……。貴方に」


初恋だった。


「貴方はいつも笑顔で……とても安らぎの雰囲気のある人だった。…本当に、大好きになった」


それは、まだ片想いの時の話。


「……なのに、咲乱…。あんたと同じクラスになった途端……」


憎しみを込めた目で、咲乱を見る。


「周助の目はあんたに向かった―――」





「おはよう、不二くん」
「おはよう、藤堂さん」


何度か周助に話しかけ、もう普通に会話ができるようになった頃。
愛美は、気付くのは早いほうなの。


「あ、咲乱。おはよう」
「あ……おはよう」


愛美から離れたところに咲乱を見つけると、すぐに駆け寄って話しかける。
……なんで、愛美から目を逸らすの。


「今日、いい天気だよね」
「……そうね」


無愛想に返事をしている咲乱。
それなのに、周助は愛美が見たこともないような笑顔で話しかけていた。
なんで。


「一緒に教室まで行こう?」
「………ん」


なんで愛美よりそんな子を―――


「……っ、愛美のよ……」


今まで、欲しい物はすぐに手に入れてしまう愛美の性格。
よりによって、咲乱に取られるのは嫌だった。
そんな時―――


「ねぇ聞いた?蓮杖咲乱がテニス部のマネになったんだって」
「は…?本当?私たちがいくら頼んでもだめって言われるのに……」
「どうせ、媚でも売ったんでしょ?」
「……生意気」


そんな会話を耳にした。
そう、咲乱は女子大半を敵に回した。
………丁度良いと思った。


「………ふふ、愛美の演技、見せてあげる……」


全ては、愛する人を手に入れたくて―――





「……それから、咲乱と友達になって、周助たちに近づこうとした……」


話すと、青学の皆の表情がピリピリし始めた。


「……でも、どうして青学の皆まで?貴女が手に入れたかったのは周助だけじゃ……」
「…分かってないわね。咲乱は」


愛美の性格を。
皆の中心にいたい。
手に入れたい。
―――奪いたい。


「中心にいたあんた。だから、よ。中心に居ていいのは愛美だけ……」


だから、愛美は咲乱を虐めることにした。
それでも周助の気持ちは咲乱に向かったまま。
それが、嫌で仕方なかった。


「まるで、二人の愛を見せ付けられてるみたいで……」


嫌気が差した。
咲乱なんか、消えちゃえばいい。
周助の気持ちなんか、失くなればいい。
そう、皆……狂っちゃえばいい。


「どうしても、咲乱には渡したくなかった。だから、周助にあんな事を言って……」


愛美のものにしたのに。


「……やっぱり、こうなる運命だったのかしら」


こんな合宿で、あんたと再会。


「皮肉なものよね」


初めから、こんな結末が用意されていたと思うと―――