愛って、狂の裏返し。

憎しみと紙一重―――





不二が話したのは本当に……真相なんだろう。
あんなにも、苦しそうに話しているんだから。


「……っ僕、咲乱には沢山言ったよね」


不二から言われた言葉。

「早く消えてね」
「僕達の前から居なくなればいいのに」


などの、私の存在を否定する言葉。


「……咲乱に、そんな事を言うつもりは無かった。……でも、どうしても囁きが耳を離れない」


咲乱が居るから、僕はこんな気持ちになる。
咲乱が居るから、僕は感情を消さなきゃならない。


「っ全部……自分の所為なのにっ……」


頭に手を当て、本当に自分のした事を悔やんでる不二。


「……そんな時、僕が一歩引くような人物が現れた」


それは、多分。


「咲乱の……お兄さんの、織」


突然現れたあの人。
何の前触れもなく。


「……本当に、驚いた。その姿を初めて見た時、何も……言うことが出来なかった」


思えば、織と初めて会った時、不二は何も言わなかった。


「咲乱にこんな事をしている罪悪感があったんだ。……でも、僕は織の企みを知ってしまった」


企み……。


「あの後、部室での会話を聞いてしまったんだ」


…という事は、全て知ってたんだ……。


「……僕は本当に頭が痛くなる思いだった。二人の関係は、複雑で……とても理解のできるものじゃなかったから」


会話だけで、関係が分かったのね……。


「だから、織が皆の前で本性を隠していたのなんか気付けた」


…確かに、あの織の態度は不思議なくらい変わっていたから。


「……ただ、愛美もそれに気付いていたのには……僕は気付けなかった」


隣で、愛美がくすっと笑う。
とことん、予想の出来ない人……。


「僕は、愛美の気が織へといってしまうのを恐れた。……僕の、今までの感情が無駄になってしまうと思ったから」


だから、織と愛美が話していると、不二も入っていったのね……。
……全く気付かなかった。


「……そうしてどんどん織の術中にはまって……」


この言葉に、青学の皆も何か考えてるようだった。


「……っじゃあ、蓮杖が織を突き落としたっていうのは―――」
「……君たちの、勘違い」
「「「………」」」


手を伸ばしたあの時。
まさか青学が見ていたなんて。


「っ俺達は―――」


手塚が呟く。

……皆、今何を想ってる―――?