ポツリ、ポツリ……。

それは、雨?

それとも
私の涙―――?





感情が交差して、私は必死で答えを探した。


「っ………」


決められないもどかしさに、少しずつ目に涙が浮かび上がる。


「っ咲乱……」
「……お願い、名前を呼ばないで……」


心の奥の私が、それに反応する。


「っもう聞きたくない……。私だって、私だって……」


逆らえない、運命がある。
逆らいたくない、現実がある。


「っ咲乱!!」
「!?」


いきなり扉が開いたかと思うと、見慣れた顔が3つ。
その後に、見たくない顔がある。


「っ跡部……」


その中心に、額に汗が浮かんでいる跡部が居た。


「…よかっ…間に合った……」
「…リョーマ……」


どうして、ここに?
どうして……青学の皆も?


「っ蓮杖…本当に……」


飛び降りるの?…とでも言いたそうな副部長。


「っだ、だめだよ…そんなことやったら……」


私の行為を止めようとする河村。
……その言葉、私じゃなくて、別の人に言って欲しかった。


「…っどうして貴方たちが…」
「幸村たちに無理矢理連れてこられた」


部長が素早く答えた。
私は、精市を見る。


「なんで……」
「…もうここで、全てを終わらそう?」


ね?と私を見る精市。
……それは、青学との関係を終わらす、という意味なの?


「それならもう答えは出てるっ!もう…何を言っても無駄よ……」


なのに、どうして…。
まだこれを続けさせようとするの……精市。


「…この人たちが望んでいるのは……私が目の前から消えること……」


青学を見ると、全員が俯いている。
何を考えているのかなんて、分からない。


「っ…そうだよ、蓮杖が早くこうしてればこんなことには……」
「んな事言うなっ!」


菊丸の発言を、向日が止める。


「……飛び降りたいのなら勝手にすればいい」
「…織さんへの、償いのつもりなんだろ…」


部長と桃城が吐き捨てるように言う。


「……織だけの為じゃない…。私自身の為よ……」


それだけは、覚えていて欲しい。


「………それなら、さっさと飛べば?」


不二が言い放った。


「自分の為だと思うなら、こんな……僕たちに構わず飛べばいいじゃないか」


私の目を見つめる不二。


「…なのに、飛べないのは……、決心しきれてないからだよ」
「っ不二……!」


……それは、正しいよ。
でも、こんな思いにさせてるのは誰?
やり切れないと思ってること…本当はあるんだよ?


「っ不二……私、やっぱりまだ……」


貴方の心内が知りたい。
どうして……いきなり裏切ったのか。
それだけが、未だもどかしい。


「貴方は、どうして私から離れていったの……」


思っている事が、言葉に出た。
その時、頬に冷たい雫が落ちてきた。
涙じゃない。
多分、雨―――


「……それが、僕の答えだからだよ」


手で受け皿を作るようにして、不二も雨を感じていた。