初めは、どうとも思うとらんかった。
やけど、一度接触してまったんや。

最後まで……知りたくなる……―――





忍足side



何やあいつ…。
褒めてもらっても何も言わへん。
ま、同じクラスやからあいつの事はよう耳にしとるし、あいつの生意気さも少しは分かっとる。


「自分、可愛くないなぁ」


そうや、ほんま可愛ない。
自分でもそう思ってるちゃうんか?


「…別に、可愛いなんて思われたくないわよ」


思われたない?
……普通、可愛いと思われたいんちゃうんか?
ま、それが蓮杖の本音やろうけど、でも、俺は見逃さへんで?
だんだん、蓮杖の表情が寂しげに変わっていくのを。
ずっと無表情やから、分かりにくいけど、微妙な変化はやっぱある。


「可愛くても、何も変わらない。得なんかしないわ」


…変わるやろ。
可愛かったら、今の自分みたいになってない。
なのに、こいつは『変わらん』て、断言しきっとる。
何があったか知らんけど、何でそこまで言い切れるんや?


「…変なやっちゃなぁ」
「そこら辺の奴等が可愛いって言うのなら一緒になんてなりたくないし、変って思われた方が楽だわ」


変と思われたい…か。
あかん。
こいつが何を考えとんのか、全然分からん。


「…やっぱ、自分のこと、よう分からんわ」


なあ、蓮杖は自分の事をどう思っとんのや?
何で、何もかも諦めたような目しとるんや?


「おーい、侑士ー!練習すっぜー…ん?何話してんだ?」


岳人…お前空気を読んでや…。
でも、少しこの重たい空気が軽くなったわ。


「…分からないのなら、分かろうとしないでよ?貴方と私とでは、全然違うのだから」


それはできんな。
分からんから、分かろうとする生き物や、俺らは。
それにしても…違う…か。
いや、俺と蓮杖は似とるで?
俺も…ポーカーフェイスって言われてん。
素直に、表情にあまり表せへんのや。


「…なあ、何話してたんだ?」
「…いや、大したことあらへん。…練習行こか」


蓮杖…お前に興味が沸いてきたで。
……自分の事を知りたい。

そう思うんは、あかん事なんか……?