言葉に出さないけど、心の中で思ってる気持ちがある。
それは、過去の辛い経験が封じているけど……。

必死に、私に訴えてる―――





「……皆、お願い…。もう、帰って……」


一人にして。
皆に、私の最期の姿は見て欲しくない。


「……っそんなの、できねぇよ…っ」


宍戸が悲痛に近い叫びをした。


「っ前にも言っただろ……?何で…自分からそんな道選ぶんだよっ……」


少し前、宍戸に頬を叩かれた時を思い出す。
……あの時は頬だけじゃなく、心も痛かった。
その痛さを、宍戸が教えてくれたんだ。


「……これで、いいのよ…。私は…もう、皆にこれ以上迷惑をかけたくない……」
「迷惑なんて思ってねぇっ!なぁ…俺たちの為なら……生きてくれよ……」


祈るように呟く宍戸。
……やめて。
そんな言葉を聞くと……。


「っ嫌よ……。もう、これ以上辛い思いはしたくない……」


氷帝に戻っても、あの視線は絶えないだろう。
この合宿に来て、皆から優しさを貰った。
その後だから、余計に辛くなる……。


「…咲乱さんは…俺たちと別れたいんスか……っ?」


赤也が眉を寄せながら呟いた。


「っ…そんなわけ、ないじゃない……」


私だって、皆とまだ一緒に……。


「……でも、それとこれとは…」
「同じッスよ!」


今度は叫んだ。


「っ俺は…何時だって……咲乱さんを守りたいって……支えたいって……」


語尾になると、少し声が小さくなるのが赤也の気持ちを表している。


「…合宿の前…久しぶりに咲乱さんに会って、驚いたけど…すげぇ嬉しかった……っなのに…」


ぎゅ、と拳を握って、


「なんでまた俺たちの前から居なくなるんスかっ!」
「っ赤也……」


だんだんと興奮してきた赤也を、立海が止める。


「……咲乱、俺たちは、赤也と同じ気持ちだ……」


蓮二……。


「っなぁ…、俺等、咲乱の幸せ≠願ってんだ…。こんなこと≠ヘ望んでない……」
「……これが、私の望む幸せだとしても……?」
「っ俺等が咲乱を幸せにしてやりたいんだよ!」
「ブン太……」
「…咲乱、ブン太の言う通りじゃ…。さっき、合宿が始まる前からこうしとうとしていた、と言ったな……。俺たちは、こんな結末の為に咲乱を合宿に連れてきたわけじゃないぜよ……」


雅治……。
っ、それは…確かに悪いと思ってる……。
皆に、迷惑や大変な思いをさせて……。


「っ…立海の皆には……本当に悪いと思ってる……。ごめんなさい……」
「っその気持ちがあるのなら…、俺たちの為に生きてくれ」
「………」


弦一郎も、悲しそうな顔をしている。


「……俺たちは、約束したんです…」


今度は、日吉が呟いた。


「…必ず、咲乱さんの笑顔を取り戻す…。幸せにしてみせる、と……」
「…そう、だぜ。俺たちは、それを達成させたいんだ…」
「…なぁ、咲乱」
「………」


皆の言葉に、私は反応しない。


「…俺等とおって、少しでも幸せを感じてくれんかったか……?」


………感じた…。
特に、合宿の最終日。
私の居場所があって……。


「ほな、…俺等に、期待してぇや……」


期待……。
初めは、全くしていなかった。
でも、この合宿を通して。
皆が真剣に考えてくれて…。
少しそんな気持ちが芽生えたかもしれない。


「っ…。もう、やめて……。折角、決心したのに……っ」


期待、させないで。
心の奥の私が叫んでるの。
閉じ込めたドアを叩いて、訴えてるの。

幸せになりたい=\――

でも
過去の辛い記憶が、それを抑えてる。
…無理だよ。
私には、どちらを選ぶかなんて……。

ねぇ、私はどうすればいいの?
織……。


どちらなら、許してくれる―――?