理解できない。
したくもない。

どうして?

俺たちは、君と居たいんだ。
君と離れたくない。

もう、大事な大事な仲間なんだよ。
どうして俺たちの前から居なくなろうとするの―――





No side



「っおい、もっと速く走れっ……!」
「これでもめっちゃ急いどるわっ」


今、氷帝は全力で屋上まで走ってる。

屋上は4階にある。
必死で、階段を駆け上げた。


「っ何でだよ……!咲乱……っ」


皆が、理解できない表情で、でも、足は動く。
あの手紙の内容は、皆には理解できなかった――





「何だよ、跡部…」
「何も言うな。これを見てさっさと屋上へ行けっ!」


ついさっきのこと。
跡部はそれだけ言うと立海の方へ向かった。


「……何なんだ?」
「…とりあえず、読もか」


そして、全員が絶句した。


「っなんで……?咲乱……?」


ジローが目を見開いて呟いた。


「っ……。まだ間に合う筈です!早く屋上に行きましょう!」


日吉が叫び、皆全力で走り出した。
そして今に至る。
誰もが、胸の中で呟いた。


咲乱、お願いだから、俺たちの前から居なくならないで。





「立海、…聞いてくれ…」


一方、跡部は幸村を中心に、全員に話しかけた。


「何だい、跡部」
「っ咲乱が……俺たちの前から消えようとしている…」
「「「えっ?」」」
「つまり、だ………」


跡部は手紙の内容を説明した。


「っ何だって……?」
「ま……マジかよ……」


やはり、信じられない、とでもいうような顔になった。


「本当だ。……だから、これから全員で止めに行ってくれ……」
「ああ、分かった。皆、急げ!」
「「「おう!」」」


真田の号令で、屋上へ向かう足音が鳴った。


「………幸村、お前は行かないのか……?」
「…それは跡部……君もでしょう?」


ただ一人、動かない人物が居た。


「っ俺は……」
「青学のところに行くつもりでしょ?」
「っ……」


図星なのか、跡部は目を逸らした。


「…俺も行くよ」
「幸村…」
「咲乱を止めるには、青学の力も必要だからね……」
「………ああ」
「……越前は?」
「多分、もう向かってる…」
「…よし、越前一人で行かせてはだめだ。跡部、急ごう!」
「ああ…っ」


そして、二人は屋上とは反対の方向へと向かった。