この決断が出来たのは
貴方たちのおかげです。

後悔なんかしていません。
私は今、とても幸せだから―――





跡部side



とうとう、朝になった。
今日で皆解散する。


「……全員、集まれ」


初めに全員が集まった場所で指示を出す。
氷帝と立海はもう並んでいる。
後は、青学が来て速やかに解散式が行われる。
………筈だった。


「っ跡部さん!!」


越前が俺のところまで駆けつけるまでは。


「どうした、越前」
「っ咲乱…咲乱先輩が……っ!」
「……何だって?」


越前は一つの手紙を取り出した。
その内容を見た瞬間、俺はこれ程時が止まって欲しいと思ったことは無かった。


「氷帝はすぐに屋上へ向かえっ!!」





咲乱side



「ごめんなさい、本当に」


今、私はフェンスから外を見ている。
もう外にはバスが止まっていて、皆はそれに乗って帰るんだろう。
私は帰りません。


「……手紙じゃなくて、言葉で伝えたかったけど……」


貴方たちは、止めるでしょう?
私が、こんな事をすると知ったら。



「氷帝・立海・リョーマへ

 合宿の間、本当に色々ありました。
 沢山、支えてくれました。

 まずは、皆へありがとう。

 そして、文章で書くことを許してください。
 私に勇気が無いばかりに、最後まで自分の気持ちに素直になれませんでした。

 でも、皆と出逢い、関わることで私はケジメをつけることが出来ました。
 
 リョーマ…。
 貴方は、私に会う度に謝ってたわよね。
 でも、謝るのはこっちなの。
 ごめんなさい。
 青学の皆と、共に全国を目指してね。

 立海の皆…。
 小さい頃の、未熟な私を支えてくれてありがとう。
 本当に小さい頃、皆との思い出は絶対に忘れません。
 一番、幸せな時でした。
 
 氷帝の皆…。
 まずは、私の事に巻き込んでしまって本当にごめんなさい。
 ……でも、皆が話を聞いてくれて、支えてくれて、凄く嬉しかった。
 …印象を悪くした筈なのに、それが裏目に出るなんて、思わなかった。
 本当、沢山迷惑をかけちゃってごめんなさい。

 私は自分の人生のケジメをつけたいと思います。
 貴方たちからしたら、私の行動は失礼でしょう。

 今まで信じてくれて、守ってくれたのに。
 
 でも、これが私の最後の選択なんです。
 今まで、否定も、肯定も出来なかった私が出来る、最後の選択……。

 自分の人生の最期は、自分で決めます。

 決して、辛くてこんなことをするわけじゃありません。
 貴方たちに出逢えて、失っていた感情を取り戻した気がします。

 私は、とても幸せでした。
 私の事は忘れて下さい。

                       
            咲乱。」




「……屋上って、こんなに気分がいいのね」


辛いことばかりの思い出。
それでも、ここから離れられなかった。
未練ばかりの場所なのに。


「……やっと、本当に終わるのね」


私は、これで全て断ち切る。


「…最後まで、誤解は解けなかったけど……。私、もういいから」


風に話しかけるような声で言った。
今日もいつになく晴天。
屋上から下を見下ろした。


「……これが、織の見た景色……」


永遠の別れを告げる直前まで見ていた。
地面が目の前まで来る時、どんな気持ちだったんだろう。


「織……見てる?こうなる事、予想してた?」


今度は空を見て呟いた。

今から、貴方の所へ行きます。