もう終わり。

いつの間にか、終わってしまった―――





食事だけで、もう時間が過ぎてしまった。
それから入浴を済まして、今は7時。

私は、自分の部屋に居た。


「……終わった」


長かった?
短かった?
答えはない。
見つからない。

コンコン。


「……誰?」
「…俺ッス」


今の声は……


「リョーマ…?」


ドアを開けると、思った通り、リョーマが立っていた。


「……もう、合宿、終わっちゃうから…」


話しに来たのかしら?


「…入って」
「…ッス」


部屋にリョーマを入れて、ドアを閉めた。


「合宿、終わるの早かったね…」
「……俺は、長く感じたッス」
「…そう」
「俺、咲乱先輩に謝りに来たんス」
「………え?」
「今まで、何も出来なくて……本当に、すみません…」
「…もう謝らないで、リョーマ」


今まで、何度も謝って来たリョーマ。
でも、リョーマは悪くない。
リョーマは謝らなくていい。


「……頭を上げて。…私ね、リョーマには感謝してるのよ……?」
「………」


言うと、リョーマは顔を上げた。


「青学で、孤立していた私を……最後まで信じ、支えてくれたのはリョーマ……貴方だけだったもの」
「……咲乱先輩…」
「私の方が悪いことをしたわ。……リョーマを、青学の皆から離れさせてしまった……」
「……そんなの、どうでもいい…。……あんな人たち、仲間でもなんでもない……」


切なそうに眉を寄せるリョーマ。


「…そんな事言わないで。…リョーマは、青春学園テニス部なんだから……」
「………」
「……私が居なくなったら、青学の皆とは仲良くするのよ?」
「……?」
「私が居なかったら、青学と仲良く出来るから……」
「え、咲乱先ぱ…」
「ほら、そろそろ部屋に戻った方がいいわ。リョーマ、お休みなさい」
「あ……お、お休み……」


私は部屋からリョーマを追い出した。


「……ごめんなさい、リョーマ…」


謝るのは、私の方なの。
今まで、リョーマに言ってなかった。
言えなかった。


「私の所為で……リョーマに辛い思いさせちゃって……」


私を守ってくれてたから、青学の皆からも避けられてたよね……。
それなのに、私はリョーマに何も言ってない。


「……ごめんなさい……ありがとう……」


私の今まで言えなかった言葉、気持ち。
上手く言葉で伝える事は、誰にも出来なかった。

立海……氷帝……リョーマ……。
本当に、ありがとう。

私は、今日は静かに、早めに眠りについた。