これからどうなるか、なんて。
誰にも分からない。

考えても
その通りにもならない。

でも
皆、同じ事を祈っている―――





No side



「……これで、良かったのかな」


そう呟いたのは、丸井だった。


「…分からない。だが、咲乱はこうなる事を望んだ」
「…柳先輩でも、この後どうなるか分からないんスか?」
「……俺でも、何でも知っている、予測出来るワケではない」
「咲乱の事を考える時は、誰でも慎重になるもんじゃ」
「……そうッスね」


はぁ、と切原が溜息をつく。


「……赤也が溜息とはな」
「…そりゃ、俺だってこういう時は溜息くらい出るッスよ…」
「まぁそう悩むな。今の咲乱は昔の咲乱ではない。確実に前に進んでいる」
「…そうだな。俺たちは、俺たちなりに守ってやろうぜ」
「咲乱には、絶対に幸せになってもらいたいからな」
「ッス」
「そうだな」


誰もが咲乱の幸せを願っている。
その気持ちは、どのくらい咲乱に届いているだろうか―――





咲乱side



「咲乱さん、こっちは出来上がりましたよ」
「そう。じゃあ、運んでくれる?」
「はい、分かりました。…樺地、少し手伝ってくれる?」
「ウス」


調理は順調に進んでいる。
思えば、合宿中で静かに過ごすのは初めてかもしれない。
今は、ゆっくりこの時を過ごそう。


「……精市」
「何?咲乱」


今、調理場に精市と二人きり。


「合宿中、ずっと迷惑掛けっぱなしだったわよね…」
「……何言ってるの?そんなこと無いよ。俺たちは咲乱を守ってるんだから」
「……うん。本当に、感謝してる…」
「……咲乱?」
「今まで、私の事を守ってくれて、支えてくれて……本当にありがとう」
「咲乱……」
「…料理、出来たわね。運ぼう?」
「うん」


精市は何か言いたそうだったけど、私は料理を持って食堂に出た。
そして、料理を配った。


「咲乱、こっちだぜ」


料理を配ると、跡部が呼んだ。


「ここやで、姫さんの席」


忍足が空いている席を指差した。
そこは、跡部と忍足の間の席。
私の席……。


「早く座れよ、折角の飯が冷めるぜ」


宍戸が、微笑みながら呼んだ。


「……今行く」


そして私は、皆が用意してくれた私の席≠ノ座った。
嬉しかった。
私の席がある事が。
笑顔で呼んでくれて……。


「咲乱、合宿が終わっても俺たちのマネージャー続けてくれる?」


ジローが首を傾げながら聞いてきた。


「言っとくが、学園の奴等なら俺たちが何とかする」
「一時も離れずに姫さんの傍に居るで」
「あんな奴らの事なんか気にすんなよ」
「……うん」


そう言ってくれるのも、とても嬉しい。


「……考えておく」
「A〜?俺、咲乱がマネージャーがいいっ!」
「……分かったから、早く食べたら?」
「絶対だよっ!よーし、食べるぞー!」
「少し落ち着けよ、ジロー」
「激ダサだぜ?」


皆が笑っている。


「……皆」
「ん?何だ」
「……今日は、皆の一日をくれて、ありがとう」
「「「……?」」」


皆、驚いた様子だった。
それもそうよね。
私の口から、『ありがとう』なんて言葉が出たんだから。


「……それに、色々迷惑掛けて、ごめんなさい」


氷帝は、まだ言葉が出ないようだった。


「でも……嬉しかった。私の事を理解してくれて、守ってくれて」
「……あ、ああ」


宍戸が、少し照れくさそうに返事をした。


「……気にすんなよ。俺たちがしたい事だからな」
「……ありがとう」


今日は、本当に……
貴方達に感謝します。

ありがとう―――