誰にだって、人を想う気持ちがある。
例えそれが悪い方向だとしても。

純粋に想う気持ちがある―――





「……もう、こんなに時間が経ったのね」


時計を見ると、2時を回ってた。


「……昼食のこと、すっかり忘れてたぜ……」
「…少し話が長くなっちゃったわね。……食堂に行きましょ」
「…そうだな。皆腹減ってるだろ」
「俺、ペコペコっす…」
「赤也らしいわね」


私たちは少し遅れた昼食をとるために食堂に向かった。





「咲乱、昼食作るの手伝うよ」
「あ、俺も手伝います」
「うん……お願いするわ」
「俺等も手伝おうか?」
「……いえ、いいわ。今日は料理が出来る人だけで作るから」


出来る人といったら……精市、鳳、樺地……くらいね。
そして、食堂に足を踏み入れた。


「……あ」


すると、青学の連中が先に居た。


「……君たち…練習してたの?」


連中といっても、居たのは大石と河村だった。


「…いや、してねぇ。……お前たちは何してんだ?」


跡部が答えた。
同時に、少し二人を睨んだ。


「……いや、ほら…愛美が体調を崩しただろ?」
「まだ良くならないんだ……。だから、俺とタカさんでお粥でも作ろうと……」
「…他の奴等は?」
「皆、愛美を看病してるよ」
「…あんな大勢でか?」
「……うん」
「…タカさん、もう行こうか」
「あ…そうだね」


お粥が出来たのか、二人はそれ以上何も言わずに立ち去った。


「……あの二人も、藤堂に騙されてんだよな」


向日が呟いた。


「…あの二人は優しいから。愛美が放っとけないのよ」


私は静かに調理場に入った。


「…それじゃ、俺たちが作るから、皆は待っててよ」
「…ああ」


そして、精市と鳳と樺地も調理場に入った。





No side



「……なぁ、跡部」
「…何だよ」


それぞれ学校別に机に座った。
その中、忍足が跡部に話しかけた。


「……なんで、咲乱があんな目に遭わなあかんのやろな」
「……俺に聞くな」
「…咲乱は自分が悪いって思ってるんだよね……?」


芥川が呟いた。


「……咲乱はなんにも悪くねーのに…」
「…自分で背負いすぎだよな」


誰もが、咲乱の事を考えていた。


「……俺たちに、出来ますかね」
「…何がだ?日吉」
「…俺たちで、咲乱さんの笑顔を取り戻す事が」


日吉の言葉に、少し考えてる様子のレギュラーたち。


「……出来る。…いや、取り戻してみせる」


跡部が決心したように言った。


「…そうやな。俺等が姫さんを楽にさせんとな」
「これからは俺たちが、咲乱を守ってやんないとな」


そう全員で約束すると、少しだけ、雰囲気が柔らかくなった。

必ず、自分たちが咲乱の笑顔を取り戻してみせる。
必ず、自分たちが咲乱を守ってみせる。
必ず……


咲乱を幸せにしてみせる。