私だけが悪い………わけじゃない。
私だって……失くした。

あんた達に……盗られた―――





「………」


ここまで話すと、氷帝も何も言わなくなった。
それでも、真剣に話を聞いてくれているのは分かる。


「……っ」
「青学……マジで……」


途中までで、次の言葉が出てこない向日。
宍戸は、表情からして、怒りを抑えていると分かる。


「……その冷たい言葉を平気で放つのは、あの人……」





「君の所為で、織は死んだ。……そうだよね?」


不二が、感情のこもってない目で私を見る。
そして、問いかけてきた。


「っ……」


私は、どう答えていいのか分からなかった。
私じゃない。
そう、言いたいのに……。


「………言えよ。…お前が……織を突き落としたって」


どうして、私の言葉を求めるの?
もう、貴方たちの中では……決まってるんでしょ?


「……違う…。私は、織を殺さない…」
「言えよ、お前の所為なんだろ!」


菊丸が叫んだ。


「お前が……織さんを殺したんだろ!」


桃城が怒鳴った。


「君の所為で…織が…っ」
「あんなに、良い奴だったのに…っ」


大石と河村が、とても悲しそうな顔で私を見る。


「最低だね、君は」


不二は……相変わらずの表情。


「この人殺し……!」


海堂が吐き捨てるように言った。


「私が……人殺し?」
「ああ、そうだ。…お前は織を殺した」


乾が確信を持った言葉で言う。


「人殺し!!」


だんだんと『人殺し』という声が大きくなる。
……ねぇ、青学の皆さん。

私が人殺しだったら、貴方たちは何なの?


「……ほんと、最低だぜ…。俺たちの幸せ全部奪って……あんたは悪魔だ……」


桃城はやり切れない感じで言った。

貴方たちだって、私の幸せを奪った。
感情を奪った。
居場所を奪った。
そういう貴方たちは、何なの?


「っあんた達だって……」
「……?」
「あんた達だってっ、私からたくさん奪ったっ!!」


気付いたら叫んでいた。
青学の連中は、少し驚いた様子だった。


「奪った?……何を……」
「全部!!私の幸せっ……思い出……全部、全部……」


貴方たちから嫌われた瞬間。
全て失った。

「咲乱、ドリンクはー?」
「はい、これ」
「ありがとにゃー」
「俺にも下さい!」
「はい、桃の」
「どーもッス!」
「よく働いているな」
「そ、そう……?普通だけど……」
「……俺も、頑張ってると思うけど」
「ああ。咲乱の働きぶりはデータにも出ている」
「うん。凄く助かってるよ」
「はは。無理しないようにね」
「……フシュー」
「ふふ、ありがとう」


楽しかった思い出が崩れ去った。
自然と出ていた笑顔を忘れた。
感じていた幸せが感じられなくなった。
人を嫌いになった。
信じられなくなった―――

全て、あんた達の所為……。


「もうっ、嫌……!どうして、私なの…っ」


それは叫びじゃなく呟き。
別に青学に届いて欲しいとは思ってない。
答えが欲しいとも思ってない。


「っ蓮杖……」
「うるさいっ!!これ以上私から奪わないで!もう散々なの……っやだ……」

「じゃあ、君が消えれば?」


そう呟いた人物は、もう分かる。


「不二……」
「君が消えれば、もう何もかも無くなるんだから」
「―――っ」


青学で最後に聞いた言葉がそれだった。
私は勢いだけで飛び出すと、すぐに学校を出た。

そして―――

私は二度と、青学に姿を見せることは無くなった。