私の事をどう思おうが、知った事じゃない。

私は、『私』を捨てたのだから……―――





「……まずはドリンクを作ればいいか」


ドリンク……か。ドリンクで思い出す記憶は結構ある。

「ドリンク、美味しいよ」
「咲乱先輩の作るドリンクは最高だぜ」

初めて褒められて、あの頃の私は、私じゃないみたいに楽しく生きていた。
でも、そんなのは一瞬の安らぎ程度に過ぎなかった。

「君のドリンクなんて、いらないよ」
「こんな不味いドリンク、俺達に飲ませるなよな」

久しぶりの罵声で、やっぱり私はこう生きる運命なんだと悟った。
そして私はまた、地獄を生きる事になったんだ。


「……もう、あんな事にはならない」


考えを停止させ、出来たドリンクを持って、レギュラーの所に行く。
丁度皆が集まってたから一度に渡す事が出来た。


「…はい、ドリンク」
「ああ」
「貰うぜ」


次々と手元のドリンクが減る。
久しぶりの光景だ。


「お、意外に美味いぜ！」
「そうだな、イケるぜ」
「そ、飲んだんなら返して」
「…あ、ああ」
「…ほらよ」


そう…初めから嫌って。
そうすれば余計な気力を使わなくて済む。


「自分、可愛くないなぁ」
「…別に可愛いなんて思われたくないわよ」


そんなの私には必要無い。
『可愛い』なんて私には分からない。
一体何なの？
可愛いと思われたら何か変わるの？
…あ。あの人は『可愛い』って言われたからああなったのかな？
だったら、私に『可愛い』なんて要らない。


「可愛くても何も変わらない。得なんかしないわ」
「…変なやっちゃなぁ」
「そこら辺の奴等が可愛いって言うのなら一緒になんてなりたくないし、変って思われた方が楽だわ」


それは本音。さあ、貴方も私を嫌って？
嫌いになって、私に関わらないで。
その方が楽。私も、あんたたちも……。


「…やっぱ、お前の事、よう分からんわ」


分かってもらいたいなんて思って無いもの。
私のことを知っても、貴方は何も出来ない。
断言出来る。


「おーい、侑士ー！練習すっぜー…ん？何話してんだ？」


おかっぱが来た…。
でも、今私が話してるのは忍足の方。


「…分からないのなら、分かろうとしないでよ？貴方と私とでは、全然違うのだから」


私はそれ以上何も言う事が無いから次の仕事に向かった。