「みんなーっ!起きて!」 翌朝。 いつにも増して燦々ときらめく太陽を背に、麻燐は笑顔を見せる。 「……麻燐は朝早いんだな」 「えへへ、いつものことだよー」 眼鏡をかけた乾に微笑む。 柳はとっくに起きていて、すでに着替え始めていた。 「麻燐がこの時間に起きる確率は99%だった」 「ほんとう?さすが蓮二くん!」 「ぶっ!!」 麻燐の言葉に、隣で寝むそうに目をこすっていた菊丸が噴出した。 「……や、柳がそう呼ばれると、なんだか違和感があるにゃ〜」 「失礼だな。俺は妹にもたまにそう呼ばれるから違和感などないぞ」 「……ああ、だから麻燐さんの目の前でも平気で着替えられるんですね」 「ああ。これくらいで恥じる必要はない」 「蓮二は意外とシスコンだからな」 「……その話はするな、貞治」 柳が少し眉を寄せる。タブーなんだろう。 その柳の様子と打って変わって、柳生は起き上がるものの着替えない。 「私は妹の前でも決して裸体など見せることはありません」 「それはお前が恥ずかしがり屋なだけだろう」 「ち、違います。これは紳士として当然のマナーで……」 言い通そうとする柳生の様子を見て、柳はふと笑って自分のことに専念した。 「それにしても、向日はまだ起きないかにゃー」 「がっくん先輩はお寝坊さんなんだね」 菊丸と麻燐が向日の顔を覗き込む。 完全に眠っているようで、寝息を立てている。 「あ、こう見るとがっくん先輩って睫毛長いんだね」 「本当だー。意外だにゃあ」 「がっくん先輩、目が大きいから羨ましいなー」 「えー麻燐だって大きいじゃん」 「………(何故だかここは女子の部屋のようにも思えます)」 紳士は会話だけでもどきどきしてしまうのです。 それを見かねた乾が、 「菊丸、麻燐、起こしてやってくれ」 「わかった!」 麻燐が素早く返事をして、向日を呼ぶ。 「がっくんせんぱーい!朝だよー!」 呼びかけるが、起きない。 「ん……少し揺すった方がいいかな?がっくん先輩ー!」 麻燐が向日の身体をゆさゆさと揺する。 すると向日は少し動いた。 ……が、体勢を変えただけで起きなかった。 「うーん。しぶといなー。麻燐、こうなったら向日に飛び乗るんだにゃ!」 「えっ!でも……」 「いーのいーの。早くしないと閉会式に遅刻しちゃうし」 「遅刻はしちゃいけないし……それならしょうがないね!」 麻燐はとおっ!と向日のベッドに飛び乗る。 「で、身体を思い切り揺するんだにゃ!」 麻燐は頷くと、菊丸の言われた通りに向日を力いっぱい揺すった。 向日の首がかなりガクガクしていたが、これも起こすため、と思い周りは止めなかった。 そして、 「う、ああっ!」 悲鳴と共に向日は目を覚ました。 「あ、起きたーっ!」 「麻燐っ……な、なにやってんだよ」 「がっくん先輩を起こしてたの」 向日はふと自分の今の状況を確かめる。 自分はベッドに寝ていて、麻燐はそんな自分の上に乗っかって自分の顔を覗きこんでいる。 「がっくん先輩なかなか起きてくれないからー」 「も、もう起きたからそこを降りろっ!」 「はーい」 麻燐は起きたことが嬉しいのか、にこっと笑ってベッドから降りた。 そして自由になった向日は息を整える。 「(やべえ……一瞬侑士の気持ちが少し分かったぜ)」 一瞬でも理性を失いそうになった自分が悔しかったようです。 「あははー。向日面白いにゃー」 「うるせえっ!」 からかう菊丸に牙をむく。 そんな様子を麻燐は楽しそうに見届け、 「じゃあ麻燐はお部屋から出てるね。もう少し時間があるからゆっくり着替えても大丈夫だよ!」 時間を確認して、最初に着替え終わっていた麻燐が部屋を出ていく。 パタパタと足音が遠くなり、その場に居たほぼ全員がほっと一息ついた。 「向日くん………破廉恥です」 「っ俺がやったんじゃねえよ!!」 再び顔が赤くなる向日。 墓穴を掘ってますね。 「しかし、麻燐が居るだけでこんなにも朝から賑やかなんだな」 「ああいうキャラは珍しいからな」 「あーっ、あんな妹が欲しかったにゃー」 それぞれ呟いた。 そして柳生もようやく着替えを始める。 「……麻燐さんはしっかりした一面も持ってますしね」 「そうだな……。ああ見えて、意外と俺たちのこと見ててくれるし」 「あんな子がマネージャーだったらきっと美味しいドリンク作ってくれるんだろうにゃー?」 「……俺は栄養重視派はなだけだ」 菊丸の言葉に乾は眼鏡をかけ直して答える。 「……皆、準備はできたか?」 「おっけーだよ」 「俺も」 荷物を持ち出して閉会式をするので、柳が確認をとる。 そして全員が準備したのを見て、移動を始めた。 次はいよいよ閉会式です。 |