「もふもふ……」 「おっ麻燐いける口だなー」 「ん!麻燐食べるの好きー!」 席は相変わらず自由ですし今回は畳なので、皆さん麻燐を中心に円を描くようにわらわれと座っています。 麻燐はそんな異様な光景には気付かず、好きなものを好きなだけ食べています。 すると、隣に居た桃城が口に食べ物を目いっぱい詰めながら言った。 「だけど太ってねえよなー。羨ましいぜ」 「ブン太先輩はそうはいかないッスもんね!」 「うっせ!」 その目の前にいるのは丸井と切原。 同じく、目いっぱい食べてます。 「えー麻燐だって太るよ?この間なんて、麻燐が転んじゃった時、起こしてくれた男の子が重いって言ってたもん……」 「それ、絶対本心じゃねえな」 唇を尖らせながら言う麻燐の言葉に、丸井がすかさず言った。 「そうッスね。麻燐、それはあれだぜ、好きな子ほど虐めたくなるっていう……」 「っかー、その男子が羨ましいね、羨ましいよ」 「そうかなぁ……」 恋愛に対して経験が全くない麻燐はいまいちピンとこない様子。 それを微笑ましく見ている先輩3名。 「それだと、赤也もその部類に入るだろう」 「げっ!いつのまに居たんスか、柳先輩……」 いきなり会話に参戦してきた柳。 「ふむ。切原の恋愛におけるツンデレ率は6:4と丁度良い具合だからな」 「って乾先輩まで!」 乾までノートをばっちり抱えているようです。 「な、なんなんスか急に!俺のことはいいっしょ!」 「甘いな、赤也。こういう幼い恋愛対象がいるのにデータを取らずしてどうする」 「他校のデータも中々面白い」 「幼いって……俺と麻燐は1個違いなんスけど」 「あははー、お前らなら精神年齢も近そうだし、いいんじゃねーの?」 「ちょっとブン太先輩!それは麻燐にも失礼ッスよ!」 「?」 話の内容についていけない麻燐。 桃城が避難させようとするが、がっちりデータマンに囲まれていてできなかった。 「桃城のツンデレ率は2:8と比較的オープンな方だな」 「わ、悪いッスか……」 「いや、桃城らしくていいと思うぞ」 一体何を評価しているのか……。 テニスはどうしたんだいデータマンさん! 「……乾先輩、今年の一押しはツンデレなんスか?」 「ああ。かなり人気を呼んでいる。俺も挑戦しようと思ったが、どうもデレの仕方が分からなくてね」 乾のツンデレ……。 そ、想像できませんね。 何より、挑戦しようとしたアグレッシブさに脱帽です。 「でも、ツンデレといやあ、氷帝の日吉とかじゃないんスか?」 「ああ、日吉か」 「……なんでそこで俺の名前が出るんだよ」 丁度近くでご飯を食べていた日吉。 麻燐に手招きをされて隣にきた。 「わか先輩、なんだかね、つんでれ≠フ話をしてるんだってー」 「……そうみたいだな。麻燐は耳を塞いでていいぞ」 「いやー!麻燐も聞く!」 「………はぁ、」 「日吉は9:1だな」 「極端ッスね」 「ああ。日吉がデレるのは極稀にしか見られない。だがそれが良いという層もいるようだ」 他校のあんたが何を知っているんだ。 と口では言えない日吉は心の中で叫ぶ。 「とはいえそれも少数派。ツンデレ好きといえど、あまりにもデレがなさすぎるとただの生意気になってしまうぞ、日吉」 「あーそうですね。俺には関係のないことでしょうけど」 さっさとこの話題を終わらせたい日吉は適当に返事をする。 「甘いぞ。ツンデレをやっていくのならギャップとしてデレをきちんと見せるべきだ」 「(だから狙ってツンデレやってるわけじゃねえんだよおお!つか俺はそもそもツンデレじゃねえし!)」 日吉はとうとう握りこぶしを作りました。 先輩だから言い返せないのが悔しいんですね。 「そっかー、ま、頑張れよ日吉」 「何故お前に慰められなければならない」 キッと怖い目で桃城を睨む日吉。 「………か、勘違いするなよ!お前に慰められて嬉しいなんて思ってないんだからな!」 「仁王さんそこで何やってるんですか」 日吉の声真似でデレを表現する仁王。 心底嫌そうな顔をした日吉に即座に捕まった。 「まーくんだー!今のわか先輩の真似、すっごく似てたよ!」 「ありがとさん。なんか言って欲しい言葉があるんやったら言ってやるぜよ」 「やめてください」 できることならこの場から逃げ出したいが、逃げたら仁王が何をするか分からなくてどうしようもない状態の日吉。 まぁ簡単に言うと、デレの割合を増やせばいいんですよ。 「あっ!そうだ!」 ここで麻燐が立ち上がった。 周りはびっくりして少し声を上げる。 「どうしたんだよ、麻燐」 「もう明日の朝には皆とお別れになっちゃうでしょ?だから、麻燐ね、皆に渡したい物があるんだ!」 ちょっと待っててね、と言って麻燐は一旦部屋に戻る。 残されたメンバーは何がなんだかわからないが、麻燐の帰りを待つことにした。 待つこと5分。 「皆ー!来て来てーっ!」 麻燐が全体の中心まで来て叫ぶ。 高い声はその中でよく響き、一気に注目を集めた。 「あーん?麻燐、どうかしたのか?」 「えっとね、皆にこれ作ったの!」 じゃーんという効果音が聞こえるくらい勢いよく、麻燐はある物を持った手を高い位置に持って行った。 その手に持っている物とは、 「……それ、ミサンガか?」 「正解!りょー先輩!」 そして、はいっと笑顔で渡した。 「これ……麻燐が作ったのか?」 「うん!この前皆で買い出しに行ったときにこっそり買ったの!」 「……あぁ、あの手芸店で……」 海堂が呟く。 あの時は麻燐一人で買い物しましたからね。 皆さんは何を買ったかなんて知りません。 「えへへー。麻燐ね、昨日帰ってから早速作ったの!」 一つ一つが手編みなんだろう。 宍戸はじっとミサンガを見つめた。 「えーっとね、これが青学の皆のでー、こっちが立海の皆の!」 どうやらいくつか種類があるのか、麻燐は言いながら見せる。 そして先に代表として、部長の手塚と幸村に渡した。 「……綺麗に編んであるな」 「ふふ、各校ごとに色も違うんだね。麻燐ちゃんの愛情がこもったミサンガ……いいねぇ」 何が良いのかは深く聞かない方がよさそうですね。 ちなみに、氷帝のミサンガは青、水色、白の3色。 青学は青、赤、白の3色。 立海はオレンジ、赤、黒の3色だった。 「はいっ、氷帝の皆の!」 丁寧に一人ずつ渡していく麻燐。 「うっわー嬉C!麻燐大好き!」 「よっし、早速つけるぜー!」 「麻燐ちゃんがこんなことしてくれるなんて……俺、本当に嬉しいよ」 「……まぁ、麻燐にしては良いサプライズだな」 「素直に受け取れよ若。俺ももらうな、ありがとう」 「ウス……ありがとう」 「こんな麻燐ちゃんの愛情表現っ……俺、嬉しすぎて理性の抑えがきかへんわっ!」 「黙れ変態。……麻燐、さんきゅな」 「えへへ……氷帝の皆とはまだ会えるけど、麻燐からの感謝の気持ち!」 上から芥川、向日、鳳、日吉、宍戸、樺地、忍足、跡部。 最後は跡部に頭を撫でられ、照れ笑いをする麻燐。 そして次は青学。 「はいっ!これは青学の皆のだよ!」 「ありがとう麻燐ちゃん。とっても嬉しいよ」 「やっぱり麻燐ちゃんは優しいね。ありがとう」 「くす、麻燐の愛、しっかり受け取るよ」 「あっりがとにゃー!ずっとつけるからね!」 「ふしゅー……ありがたく受け取っておく」 「へえ。意外と手先器用なんだ。……まぁ、いいんじゃない?」 「ったく越前は素直じゃねーよなー。ありがとよ、一生大事にするぜ!」 「うん!皆ありがとうねっ!また今度遊びに行くよ!」 上から河村、大石、不二、菊丸、海堂、越前、桃城。 青学の皆も笑顔でお礼を言った。 若干勘違いしている人が1名いらっしゃいましたが。 「最後は立海の皆!」 「むっ……有り難いが、これは一体どういう物なのだ?」 「このミサンガを身に付け、いずれ千切れた時、願いが叶うとされているものだ。……嬉しいぞ、ありがとう」 「なっ!願いとは自らが叶えるものでは「私も非常に嬉しいです。麻燐さん、ありがとうございます」 「俺、こういうの初めてだ……なんか照れるな。ありがとう」 「なーんか麻燐が作ると本当に願いが叶いそうだな」 「そうッスね!さんきゅなっ麻燐!」 「麻燐と離れても、これを見れば思い出せられるぜよ。……ありがとさん、麻燐。好きじゃよ」 「なんだか悲しくなるなー…。でも、私も皆の事好きだよ!」 上から真田、柳、柳生、ジャッカル、丸井、切原、仁王。 真田に関しては柳生に強制終了されましたね。 どさくさに紛れて告白している人物も居ましたが、最後なので見逃してあげましょう。 「でも、これだけの人数作るの大変じゃなかった?」 「うん……だけど、どうしても皆との思い出が作りたかったから」 麻燐ははにかむように笑った。 時間もない中、頑張って作りましたからね。 「麻燐ちゃん……。うん、俺たちも、麻燐ちゃんのおかげで良い思い出ができたよ」 幸村が優しい笑顔で麻燐に言う。 「そうだなっ!なんか、練習も辛くなかったし!」 「俺も、むしろ楽しかったにゃー!」 丸井と菊丸も明るく笑った。 その表情も、また麻燐の思い出となるでしょう。 「ありがとう!」 麻燐もまた、同じように笑った。 ×
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