朝。
まだ、204号室では誰も起きていません。
今日は昨日と打って変わってポカポカ良い天気で、段々と気温も上がってきています。
ここで、むずむずと宍戸が起き始めました。
珍しいですね。


「あっちぃー………ん?」


自分一人が寝ているはずのベッドに、もうひとつの重みが。
まさか、と宍戸は布団を剥がしてみる。


「っ麻燐!!」


布団の中には体を丸めている麻燐の姿が。
宍戸は驚いてベッドから飛び出しました。
微妙に顔が赤いですよ。
宍戸の声で他のメンバーも起き始めました。


「朝から何だい?………」


隣のベッドの不二が目をこすって宍戸の方に顔を向ける。
そして、開眼した。


「宍戸……」


あらぬ誤解を与える前に、宍戸は慌てて口を開いた。


「ふ、不二、聞いてくれよ。麻燐が……」
「これは、夜這いかな」
「何言ってんだよっ!!」


キラーンと鋭い眼差しを受けた宍戸だが負けじと言い返す。


「じゃあ、何で麻燐と一緒に寝ていたのかな」
「知らねえよ……」
「なんじゃ……ん?」


仁王もベッドから起き上がり、宍戸のベッドの前まできた。


「………!」


そして、何かに気付いたように麻燐に駆け寄り、額に手を当てた。


「仁王……?」
「……熱がある」
「えっ」
「よく見てみんしゃい。呼吸も荒い。汗もかいちょる」


仁王に言われた通り、麻燐を見てみると苦しそうにしているのが分かった。
鳳も心配そうに麻燐を見にきた。


「やっぱり、昨日寒かったからかな……」


思えば、宍戸と鳳が麻燐に捕まった時、くしゃみをしてましたからね。


「ああ……。結局、隠れ鬼もジャージも羽織らないまま続けてたからな」
「昨日の朝から、寒い中宿舎を回らせたのがいけなかったんだね……」


不二は麻燐の辛そうな姿を見て悲しく眉を下げる。


「今悔やんでも仕方ないじゃろ。とりあえず、このまま宍戸のベッド借りるぜよ」
「あ、ああ……」


仁王は布団を首元までかける。


「鳳は跡部に知らせてきてくれ。……麻燐は今日休ませる」
「分かりました……」


鳳が急いで部屋を出て跡部に伝えに行った。


「困ったね。こんなに朝早いと医療の先生もまだ来ていないし……」
「誰か、医療に関わってる奴は……」


仁王がうーんと考えている時。
宍戸の脳裏に、ある人物が浮かび上がった。


「あ、」
「なんじゃ。誰かおったんか?」
「忍足だ」


一瞬、仁王は意外そうに、不二は嫌そうな顔をした。
宍戸はその気持ちを悟ったうえで、付け足す。


「あいつの親父が大学病院の医者なんだよ。だから、忍足も多少は……」
「ちょっと癪じゃな……。まぁしょうがない。宍戸、忍足を呼んできてくれんか?」
「……ああ、いいぜ」


宍戸は返事をすると、すぐに部屋を出た。





「何やてぇ!?麻燐ちゃんが熱!?」
「ああ。お前なら何かできると思ってな」
「よう俺を頼ってくれた宍戸!麻燐ちゃんの看病は俺がしたる!」


部屋に言って事情を説明すると忍足は麻燐の看病ができることに飛び跳ねて喜んだ。
後に部屋から出てきた後輩たちは生温かい眼差しを送っています。
未だに関係の修繕はできていないようですね。


「麻燐が熱とか、ちょっと信じらんないなー」
「お前と違って麻燐は敏感だからな」


同じように知らせを聞いていた切原が呟く。
その言葉を聞いて、日吉が嫌味っぽく言った。


「それ、遠回しに馬鹿って言いてぇのかよ」
「どうだかな」
「もー朝から何張り切っとるん?お二人さん」
「「あんたほどじゃない」」


あっさりと後輩たちに切り捨てられる忍足の姿を見て、ここはいつもこうなのかと宍戸は少し疑問に思った。


「そういえば海堂は?」
「あいつは朝いつも走ってますよ」
「へぇー、すげえな」


感心したように宍戸は相槌を打つ。
とりあえず忍足を連れていくことにした。


「……で、何でお前らも来るんだよ」
「いーじゃないッスか。お見舞いッスよ」
「下剋上です」
「見舞いは後でいいよ。若、意味分かんねえ」


少し脱力したが、仕方なく切原と日吉もついてくるのを認めた。
一応越前にも声をかけたが、睡魔の方が強いらしく起きることはなかった。


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