「それじゃあ、行くかの」
「うん!」
「麻燐ちゃん、着替えとか持った?」
「うん!」


確認もした上で、お風呂へと向かいました。


「麻燐ちゃんは綺麗な髪だね。いつもどうやって洗ってるの?」
「んー普通だよ?でもね、長いから時間かかっちゃうの。チョタ先輩もふわふわしてるよねー」
「あはは、俺も結構気を使う方だからね」
「俺も、髪には自信があるぜよ」
「まーくんは小さいころから髪が長かったよね?」
「ああ。姉貴が伸ばせとうるさいからのう」
「えへへ、麻燐、まーくんの尻尾好き!」


など、他愛のない話をしながらお風呂場到着。
堂々と女湯の方へ入ろうとする仁王を止め、無理やり男湯へ連れていく。


「じゃあ、また後でねーっ」
「ああ」


そしてそれぞれ1日の疲れを癒しました。
30分後。


「麻燐、遅いな」
「女の子だからきっと大変なんですよ」


腕を組んでる宍戸に教えるように鳳が言う。
分かってるよ、と宍戸は答えた。


「ごめんねー!中々髪が乾かなくて……」
「だからって、乾かないまま出てこなくてもいいんだよ?」


まだ髪が濡れている麻燐を心配するように不二が言う。
でも、麻燐は首を振る。


「だって、お風呂上がりにこんなところで待たせちゃったら風邪引いちゃうかもしれないでしょ?」
「麻燐は相変わらず優しいのう。こっちのことなんか気にせんでええのに」
「そんなわけにはいかないよ!だって、麻燐はマネージャーなんだよ!」


にこっと満点の笑みを浮かべる麻燐。
その顔を見ると、これ以上何も言えなくなった。


「そうだね。麻燐ちゃんは氷帝の自慢のマネージャーだよ」
「氷帝なんか辞めて立海に来んか?」
「ちょっと仁王さん、勧誘しないでください」


廊下に笑い声が響かせながら、団体は部屋へ戻った。





「それにしても、可愛いパジャマだね」
「えへへ、今日は黒猫ちゃん!」


4日目の麻燐のパジャマは白地に可愛いデザインの黒猫が描かれたものです。
パジャママニアと言ってもいいほど、たくさんパジャマを持っていますね。


「麻燐のパジャマ姿はいつ見ても襲いたくなるほど可愛いぜよ」
「くす、そういえば君と麻燐ちゃんは幼馴染だったんだよね……」


おっ、直接対決ですか?


「あはは、醜い戦いですね」


鳳……二人が睨み合いに夢中とはいえ、そんなことを軽々しく口にしてはいけませんよ!
どうでもよさそうに眺めていた宍戸は、ふと麻燐の髪を見る。


「……麻燐、これ、ちゃんと乾かしてやるよ」
「あっ、本当?りょー先輩」
「ああ。俺も長髪の頃は苦労したからな」
「ふふっ、りょー先輩も前は長かったもんね」
「まぁな」


思い出したのか、麻燐はきらきらした顔で宍戸を見つめる。
少し照れくさくなったのか、宍戸は顔を逸らした。


「麻燐と同じくらいだったもんね」
「まぁ、そんなもんだな」
「1回お揃いにしてみたかったね!」
「し、しねぇよ」


宍戸は誤魔化すように麻燐の背中をこちらに向けるようにした。
濡れている髪に、優しくタオルを当てる。


「……お前、やっぱ髪質いいな」
「えへへ、髪は麻燐の自慢なの!」
「……俺も自慢の髪だったな」


懐かしむように、宍戸は呟いた。
麻燐はその様子に気付いたのか気付いてないのか、声をかける。


「でも、今の短いのも似合ってるよ!りょー先輩って感じがする!」
「感じって、なんだよそれ」
「帽子を被ると、いつものりょー先輩だ!って思うの!」


その純粋な麻燐の言葉に宍戸は心が温かくなった。
少し寂しくなった気持ちが、すっとなくなっていきます。


「あ、宍戸がセクハラしてる」
「!?せ、せせせく……?」
「本当じゃ。宍戸も目が離せんのう」
「ちょっ待てよ、こんなのがセクハラに入るかって……」
「俺でもやったことないんですよ!」
「知るか!!」


大体乾かしたところでそう横やりを入れられ、思わず手を離す。
麻燐はこっちを向き、お礼を言った。


「りょー先輩上手だね!さっきより凄い乾いた!」
「ああ、良かったな」


言うと、麻燐は少し大袈裟に頷く。
すると、ぱっと口元を押さえた。


「―――くちゅん!」


くしゃみだ。
冷えたのか、少し震えている。


「湯冷めしたのかもしれないね。もう、寝ようか」
「う、ん……」


麻燐は鼻をすすって頷いた。
皆は麻燐をベッドに寝かせると、電気を消した。


「麻燐、辛くなったら言えよ」
「うん……分かった」


両隣の不二と仁王に気にかけられながら、麻燐は眠った。
こうして、合宿も残り1日となった。