誰もが早く麻燐に帰ってきて欲しいと願っている時。
ようやく、


「皆ー!!ただいまー!」
「「「麻燐(ちゃん)!!」」」


揃いに揃って皆さんラケットを置いて麻燐に駆け寄った。


「大丈夫だった?芥川に変な事されなかった?」
「周ちゃん!大丈夫だよー楽しかったもん!」
「ふふ、待ってたよ、麻燐ちゃん」


午後からは晴れたので外で練習していた皆さん。
なんだか心も晴れたようにぱぁっと生気が戻った人物も多々います。


「にゃ〜〜やぁっと帰ってきてくれたにゃ〜」
「英二ーただいま!」


歓迎されている感じですね。


「跡部、なんか疲れた顔してるぜ?」
「……うっせえ。このメンバーでまとめるのっつったら俺様くらいだろ」


宍戸がそう声をかけると、ようやく肩の荷が下りたとでも言いたげに跡部が返す。
最初、間違えて樺地を連れ出した時は大丈夫かと心配していた宍戸も、無事に帰ってきた様子に一安心です。


「楽しかったCー!」
「おかえりなさい、ジロー先輩。待ってませんでしたけど」
「あはは、俺も鳳に迎えられたくないんだけどね〜」


会って早々……本当、飽きませんね。
むしろ、仲が良い気さえしてきますよ。


「おかえりなさいッス、手塚部長」
「ああ。練習御苦労」
「海堂もお疲れ。どうだった、買い出しは」
「ッス……疲れただけッスよ」
「油断せずに行ってきた」
「そうか。充実していた確率は高いな」


青学の皆さんは越前の言葉から始まり、平和で涙が出てきそうです。
一部が居ないとこんなに和めるんですから……。


「丸井先輩ずるいッス!」
「まだ言ってたのかよ。お前も諦め悪ぃな」
「んなこと言ったって……!」
「まぁ、落ち着けよ。ブン太、楽しんできたか?」
「おう!跡部に菓子買ってもらったしなー」
「そうか、良かったじゃねえか」
「買い食いとは見過ごせんな!」
「相変わらず堅いのう、真田」


立海も一部が居なければこんなに家族のような……。
恐怖政治からの脱出です。和やかです。


「ふふ、詳しくそこのところ教えて欲しいな」
「……ゆ、幸村……」


穏やかな空気も束の間、魔王が戻ってきました。
一瞬にして苦笑いになる丸井。
頑張ってください。
押さえてください。


「くす、僕も何があったのか教えてほしいな」
「うむ、いいだろう」
「………」


緊張が走る海堂。
不二の不機嫌さもそうだが、手塚が何を言うのかも心配のようだ。
何とかフォローしてあげてください。


「跡部ー俺にも土産話聞かせてほし「夕食の時間だ。移動しろ」……シカトかい!」


跡部にとっては話したくないことかもしれませんね。


「楽しかったよ!あとで麻燐が話してあげる!」
「わー麻燐ちゃん優しいなぁ!」


フリーになった麻燐の手を取る忍足。
それを許さんとばかりに鳳が間に入る。


「麻燐ちゃん、俺にも聞かせてほしいな」
「うん!……あ、でもちょっと先に行ってて?」
「え?どうしたの?」
「ちょっと寄りたいところがあるの!」


ね、お願い。
と頼む麻燐を見て鳳は胸がきゅんとしながら了解した。
そして、麻燐が抱えている袋を開ける。
それが合図のように、先程のメンバーが集まった。


「今から渡しに行くんだな?」
「うん。多分ね、今の時間だとあっちにいるの」
「へぇ、よく知ってんだな」
「えへへ」


それぞれ、他のメンバーに先に行くように言い、足を進めた。
麻燐の後を付いていく。
そして麻燐が草の後ろを覗くと、
そこには子猫が丸まっていた。


「本当に居たC〜」
「ね?はい、猫ちゃん。首輪だよ」


麻燐が頭を撫で、立ち上がった子猫の首に首輪をかけた。


「……人に慣れてるんだな」
「うん。可愛いんだよー!ね、薫ちゃん」
「……ああ。首輪も似合ってるな」


そっと手を伸ばし、猫の頭を撫でる海堂。
何気に手塚は胴体を撫でている。


「名前はつけたのか?」
「ううんー」
「そうか。なら俺様がつけてやる。これはどうだ、ディープインパクt「それなら一緒に猫らしい名前を考えようぜ」


跡部の言葉はスルーして、丸井が仕切った。


「何がいいかなぁ?」


白い毛が全身を覆っている子猫。
大きな瞳がその場に居る全員を見回している。


「……雪ちゃんはどうかな?」
「雪、か……そうだな、綺麗な白色だからな」


良い名前じゃないか、と手塚は頷いた。
麻燐は他のメンバーを見ると、同じように頷いてくれた。


「猫ちゃん、あなたは気に入ってくれるかな?雪ちゃんっていうお名前」
「きっと気に入るぜぃ。麻燐が付けてくれたんだからな」
「麻燐のネーミングセンスいいC!」
「雪か……可愛い名前じゃねえか」


海堂も微笑み、再び頭を撫でる。


「じゃあ決まりっ!これで雪ちゃんも、麻燐たちの仲間だよ!」
「みゃあっ」


小さな体を両手で抱きあげ、満面の笑みを見せる麻燐。
その姿がとても愛らしくて、メンバーも微笑んだ。

その後は雪にお別れを告げ、食堂に向かった。