「あーあっ、楽しかったぁ」 「個人的には麻燐の猫耳が一番好きだなー」 あの後も少々着せ替えしていたようで。 丸井は猫耳が好きなんですね。 マニアックという線では忍足に近づいてますね。 「………」 猫繋がりで海堂も思い出し照れをしている。 純情な子は可愛らしく頭で思い返して気持ちを抑えるんですよね。 「俺はそっちの方が危ない気がするけどな」 話しかけるの禁止って言ってるでしょうが! 丸井もどうやら猫耳萌えのようですね。 「皆何着ても似合うからびっくりしちゃったー」 「そういう麻燐も何でも似合ってたC!赤ずきんちゃんも可愛かったよー!」 「あはは、ありがと!ジロ先輩やっぱりチェシャ猫さんが似合ってたよぉ」 きゃっきゃと賑わう集団。話題がまるで女子です。 跡部だけがその元気さについていけず深い溜息をついた。 「で、次はどこ行くんだ?」 「はーい!お昼寝!」 「どこでするんだどこで。それに、お前のリクエストはもう聞いただろうが」 「ぶー」 「あっじゃああそこ!ペットショップ!」 麻燐が手を挙げてリクエストをする。 それに耳を立てる海堂。 待ちに待ったペットとのふれあいのお時間ですね! 「そういえば行くっつってたな。よし、んじゃあ、すぐ近くのとこ行こうぜ」 丸井が買ってもらったばかりのガムで風船を膨らます。 それに賛同し、麻燐は元気良く飛び跳ねながら海堂の腕を掴み、ペットショップへと向かいました。 「んじゃあ、まずは皆であそこ入ろう!」 店に入った途端、麻燐が指差したのは、ペットと自由にふれあれる広場。 中に十数匹の犬がじゃれあったりして遊んでいる。 「猫ちゃんはいないみたいだね。薫ちゃん、ワンちゃんも好き?」 「あ、あぁ……」 「じゃあ皆っ早く行こう!」 ほらほら、と手招きをする麻燐についていく皆さん。 跡部は苦手なのか、あまり乗り気ではなかったが仕方なくついていった。 「あははっ、わんちゃんー!」 「……ちちちっ」 麻燐は自分から小型犬に近づき、そっと抱きあげて頬ずりをする。 その隣で海堂が猫を呼ぶみたいに小さな犬を呼んでいた。 差しだした指を見て尻尾を振りながら見ている犬を見て、海堂も段々と気分が乗ってきている。 「薫ちゃん、楽しいねっ」 「ああ、そうだな」 笑い合う二人。 海堂も声には出しませんが表情が喜々としています。 「あれ?なんか皆の声が聞こえないね」 「………」 麻燐の言葉を受けて、海堂は振り返ってみる。 すると、そこには見てよいものかよくないものが映っていた。 思わず自分の目を疑いました。 「……?あっ、ぶちょーすごい人気!」 まず見つけたのが何匹かの犬に囲まれている手塚。 本人はどの犬を構ったらいいのかあたふたしているが、犬の方はお構いなしに我先にと手塚に飛びよる。 「(部長……)」 「ぶちょーってワンちゃんたちに人気なんだね!」 海堂は珍しいものを見たという感想より、羨ましいという気持ちがあるようです。 麻燐は純粋に楽しそうに見ています。 そして、それとは対照的に、 「こら、噛み付くなって言ってるだろうが!」 こちらも珍しい。 まだ生まれて間もないであろう元気な子犬に目を付けられた跡部の姿。 引き離そうとすると、子犬はそれが楽しいようでどんどん寄ってきて終いには甘噛みをしている。 手にその痕が残っているのはこれでもお坊ちゃまと呼ばれる跡部。 「あはは、楽しそうだね、景ちゃん先輩も!」 「ったく、やけに元気がありやがるな、こいつは」 「そういう時は、ゆっくりと抱き上げてあげたらいいんだよ!」 「………抱きあげ、る?」 この俺様が? ペットショップの犬に? ですが今はそんなプライドを保っている暇はありません。 自分の手をこうも易々と傷つけられるのにカチンとくる跡部は仕方なくぱっと子犬を抱き上げる。 すると、さっきまで暴れていた子犬も大人しくなった。 落ち着くのでしょうか。 「まるで母親みたいだな」 「お前のその姿には言われたくねえ」 声を掛けてきた手塚を一瞥して言った。 手塚は1匹に絞ることを諦め、正座して子犬がよじ登っているのを眺めていた。 それをまた楽しそうに見つめる麻燐の肩を、何かがとんとんと叩いた。 ん?と振り返る麻燐の目の前にはむすっとした顔のパグ。 「きゃあっ!……もう、脅かさないでよ〜ブンちゃん!」 「ははっ、やっぱ驚くだろぃ?」 にしし、と笑う丸井がパグを抱えていた。 「でも可愛いなー。ブンちゃんも動物の扱い上手だね」 「まぁな。俺はあいつらみたいに常識外れじゃねーしな」 あいつらというのは先程の二人みたいな姿ですね。 丸井のその主張はよく分かります。 皆さん楽しそうに遊んでいますね。 跡部も、まるで芥川を扱うかのように子犬を押さえています。 ………そういえば、もう一人の姿が見えませんね。 一番騒ぎそうな人物が。 |