「っっ……お前ら勝手に入れ過ぎだアホ!」
「うわ〜!あほべにアホって言われた!」
「なっ、おいジロー!」


お怒りの様子の跡部様。
芥川を追い掛けているあの姿は紛れもなく氷帝学園生徒会長でありテニス部の頂点に立つ男です。
今は、オプションで割烹着が見えますが。


「あっこら手塚!さり気なくたけのこの里2個入れるなっ!」
「……すまない」


怒られちゃったねお父さん。
しゅんとした様子でたけのこの里を戻す手塚をポンポンと麻燐が慰める。


「麻燐がたくさん持ってきたから平気だよ!」
「……ありがとう」


貴重な微笑パート2!
手塚は最近よく笑うようになりました。


「あーあ、跡部のやつカゴ放ったままいっちまいやがった」


仕方なくカゴを持つ丸井。
だがその反対の手には恐ろしいほどのお菓子が。
跡部のお財布の危機!
……と言っても、本人はきらきら輝くカードを持っていますか。


「………」
「何をじっと見てるの?」
「……これをな」


海堂の視線の先にはキャットフード。
いつでも頭から猫のことが離れないようです。


「あっ、あの猫ちゃんの選んでるの?じゃあ麻燐がいつも買ってるのにしようっ?」


そして麻燐が棚の高い方へと手を伸ばす。
どうやら後少しが届かないようで、見かねた海堂が取ってあげた。


「これか?」
「うん!これを食べてる時の連くんね、すっごい可愛いんだよ!」
「ほう……お前んとこの猫は連って言うのか」
「男の子なんだよ!」


こちらは猫の話題で盛り上がってます。
気のせいでしょうか。
二人のまわりをお花が飛んでいるように見えます。


「ったくどいつもこいつも……!」


芥川を追うのを諦めた跡部は、それぞれ勝手にやっているのを見て初めて親の苦労が分かったそうです。





「……ち、本当に1時間もかかっちまった」
「流石跡部!男らC〜」


結局カゴに入った物を全部お支払した跡部。
やる時はやる男です!


「初めて跡部を見直したぜぃ」
「……そんなこと言うんだったら全部返品するぞ」
「うおっ、悪い悪い」


なんだか顔に疲れの色が出ている跡部。
それを察したのか気遣う丸井。


「景ちゃん先輩、買い物終わったけどどうするの?」
「そうだな……」
「はいはいはーい!」
「……なんだジロー」


よくない予感を胸に秘めながら跡部は返答する。
対する芥川は満面の笑みで、また小悪魔のように甘えた笑みを浮かべ、


「あそこ行きたい!」
「は?」


指差した方向を見て跡部は目が点になった。
その方向には、


「写真館?」
「なにすんだよ」
「行ってからのお楽しみだCーっ!」


そう言って麻燐の腕を取って走り出す。
芥川は皆さんの弱点をよく知っています。
麻燐を連れ出せば全員ついてくるのですから。





「………で、お前はこれがしたかったんだな」
「うん」
「えへへ、ふりふりー!」


この写真館には色々な衣装がありました。
今麻燐が着ているのは不思議の国のアリスの格好。
ロリロリの麻燐にはお似合いですが、それを見ている側の方が悲惨だと私は思います。


「皆も似合ってるよ!」


さて、ここで各格好をお伝えしましょう。
麻燐は当然ですがアリスです。
本来金髪であるアリスですが、麻燐の桃色の髪でも充分似合っています。
そしてメインの麻燐がアリスの衣装ということで、他の皆さんも不思議の国スタイルで決めています。


「えへへ、こんな可愛い服着たの初めてー」
「もう本物みたいだぜぃ」


跡部は……まぁ、想像がつくとは思いますがハートの女王です。
一般的に言えば女装をしているわけなんですが、あのルックスで本物に見えます。


「わぁー、景ちゃん先輩美人さんだぁ!」
「跡部は整った顔をしているからな」


はしゃぐ麻燐に同意する手塚。
そんな手塚は帽子屋ですね。
似合っていると言えばそうなんですが……せめて絆創膏を外せばいいと思います。


「わぁっ、かっこいー!あとでその帽子麻燐にも貸してね?」
「……手塚部長、表情が微妙に喜んでる……」
「めっずらC〜」


芥川は雰囲気と合っているチェシャ猫ですね。
腹黒さがぴったりだと私は感じますが……


「なんか言ったぁ?」
「ジロ先輩似合ってる!なんか可愛いー!」
「本当?ありがとー!でも麻燐には負けるC!」


……え、えっと、丸井は白ウサギですね。
白い耳と時計が妙に似合ってます。


「ブンちゃん本物のうさぎさんみたい!いいなーっ」
「うんうん!丸井くんのうさぎと俺の猫と麻燐で森のお仲間だよねっ」


最後に、海堂は眠りネズミですね。森のお仲間に彼も加えてあげていただきたい。
本人は恥ずかしがっていて顔を上げませんがよく似合っていますよ。


「あははっ薫ちゃん可愛いー!ネズミさんだっ」
「麻燐、そう耳を触ってやるな」


跡部が海堂の気持ちを察したのか一言言う。
嫌なわけではないが、海堂の心臓がドキドキいっているのが聞こえたんでしょう。


「んじゃあさ、皆で写真撮ってもらおー!」
「っジロー、マジでそんな事言ってんのか……?」
「もー、じゃあ跡部は何しに写真館に来たの?」
「………」


麻燐の可愛い姿を見たかっただけとは言えない。


「えっ?皆で写真撮ってもらうの?わー!記念にお部屋に飾ろうっと」
「……いくらなんでもそれは…「そんなに嫌がると無理矢理でも撮って全校の皆に曝しちゃうよ?」………悪い」


芥川には何を言っても無駄だと悟り始める跡部。
強引さでは跡部に劣っていませんね。


「それじゃあ、皆並んでー」


結局芥川が仕切ってカメラの前に6人が並ぶ。
前列に丸井、麻燐、芥川。
後列に海堂、手塚、跡部という順に。


「はいじゃあ取るよー」


写真館の人の声で、全員がカメラに目線を移す。
いくら無理矢理とはいえ流石の跡部も女装に抵抗があるようです。
海堂は元からの恥ずかしがり屋で正面を向きません。
まぁ、これも個性ですからね、と写真館の人は微笑みながら写真を撮った。

合宿折り返し地点での、新しい思い出となりました。


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