さて、時間も迫ってきて、残りあと1時間となりました。 ここからがある意味本番ですね。 それでは残っている人物を再確認しましょう。 青学…手塚、河村、海堂 氷帝…跡部、芥川、日吉 立海…丸井、桑原 結構減ってきましたね。 さあ、この中から優勝者は何人になるのでしょうか!? 「あっ!ブンちゃんとジャッコルくん見っけ〜!」 おっと、ここでスタート地点……麻燐が最初に数を数えていた場所に戻ってくると、丁度二人の姿がありました。 隠れ場所を探していた途中らしい丸井は、「やべっ」と膨らましていたガムを割りました。 「って俺の名前はジャッカルだ!」 「よーしっ、頑張って捕まえちゃうぞぉ!」 「……聞いてねえな」 ジャッカルはとりあえず諦め、今は鬼ごっこの方に意識を持っていく。 と言っても、丸井と違いあまり真剣ではなさそうです。 「麻燐には悪ぃが、俺は最後まで逃げきるぜぃ」 「そんなの分かんないよぉ?麻燐だって頑張るもん!」 「おう、やってみろぃ」 身構える麻燐を面白そうに見て丸井はまたガムを膨らませた。 ジャッカルは何とも言えない表情で二人を見る。 「………」 麻燐の顔は少し真剣に見えます。 丸井は心の中で可愛いと呟き、 「わーったよ。麻燐がそこまで本気なら捕まってやるぜ。……………………ジャッカルが!」 「ってやっぱ俺かよ!」 どーん! と丸井はジャッカルの背中を押し、自分はまたもや逃げる。 躓きそうになったジャッカルは麻燐の目の前でなんとか止まった。 「あっ、ジャッくんタッチ!」 「……お、おう」 名前はまだ間違えられてないことに安心し、だが捕まってしまったので少し複雑な表情を作るジャッカル。 でも、麻燐は笑顔で喜んでいるので最終的に笑顔になった。 「それじゃ、はい!鬼の角!」 「ああ、サンキュな」 「それじゃあ麻燐、また探してくるね!」 「頑張れよ」 麻燐は走り出し、次の場所へと向かった。 ジャッカルは、鬼の角を見つめ、どう付けようかと少々悩んでいた。 「日吉ぃー!ひーよーしーぃぃ!!」 こちらで叫んでいるのは最初の方に捕まってしまった向日。 一人に絞って捕まえようとしているようですね。 「ったく、どこに居んだよ……。先輩様を差し置いて残りやがって……」 嫉妬ですね、分かります。 跡部と芥川はいいのでしょうか。 「……うるさいですね。1回呼べば分かります」 「うおわっ!?おま……何で出てきてんだよ!」 にゅっとすぐ近くの部屋から出てきた日吉に向日は不覚にも身体をびくつかせた。 「呼んだのはそっちでしょう」 「だ、だけどよ……」 「それに、こうやって見つかって、逃げることになっても向日さん相手なら勝てますから」 「なっ!お前な……出てきたことを後悔すんなよっ!!?」 向日が叫ぶと、日吉は床を蹴って走り出す。 流石は運動部、俊足さはどちらも劣っていない。 だが若干、日吉の方が勝っている。 「待てぇーーっ!」 「向日さん、普通に走ったらどーなんですかっ」 今日も軽やかに飛んでいます。 飛び跳ねながら日吉を追い掛けているので、日吉の方が速いのでしょうか。 向日の奇妙な走り(?)に日吉も焦っているのか走るスピードが速くなる。 そろそろ廊下の突き当たりです。 右手には階段があるので、日吉はそこを降りないと向日に捕まってしまいます。 後ろを気にしながら、日吉は突き当たりまで近づく。 すると、 「っ、!?」 「うわあああっ!」 日吉が急に止まり、それに対処できなかった向日の着地点に日吉が。 凄い音を立てながら二人は倒れました。 日吉の上に倒れてしまった向日は何事かと前を見た。 「っあ……」 目の前には呆然と二人を見下げている忍足の姿が。 日吉はこれだから止まったんですね。 「自分ら、何しとるん?」 「……別に」 言いながら目を逸らす向日。 忍足の頭には角があるので敵ではないと判断した。 「……向日さん、どいてください」 「あっわりー」 急いで向日がどくと、日吉はむくっと立ち上がった。 パンパンと埃を払う。 「ほー、日吉、岳人に捕まってもうたんか」 「うるさいです」 「……なんかご機嫌斜めやな」 捕まってしまった事に腹を立てているのか。 向日の下敷きになったのを忍足に見られたことがいやなのか。 どれにせよ、日吉の不機嫌さは変わりません。 「もしかして、どっか怪我でもしたとか?」 向日が顔を覗き込んで尋ねるが、日吉は首を振った。 「……なんか、拗ねとる子に話しかけるような感じやな」 一応先輩ですからね。 役割をちゃんと果たしています。 日吉はそんな向日に目を合わせずに立ち去ろうとした。 「あっ日吉ー。これ、角」 向日に手渡された角をまじまじと見ると、握りしめてポケットに突っ込む。 そして何も言わずに階段を降りて行った。 「日吉も顔に出やすいやっちゃなぁ」 ズボンのポケットに両手を突っ込んでいる忍足が面白そうに呟く。 「それにしても岳人、」 「ん?」 「その角、似合うとるな」 「侑士は何かすっげぇ胡散臭いぜ」 それだけ吐き捨てる向日に忍足が嘘泣きを見せる。 向日は放っておいて日吉の後を追うように階段を降りて行った。 「……また俺、一人になってもうたな」 はぁ、と深い溜息をついた忍足は時間を見ながら移動し始めた。 さぁ、ここでジャッカルと日吉が捕まりました。 時間はあと30分もありません。 最後まで逃走劇は続きます! ×
|