「麻燐、他に探してない場所は?」
「んーと、あとはねぇ……とりあえずは皆のお部屋かな?」
「そっか。分かった。じゃあ一緒に探しに行こうか」
「うん!」


不二と麻燐は一緒に手を繋いで。
忍足も居ます。
ですが、


「なっなんで俺は麻燐ちゃんと手ぇ繋いだらあかんのや!!」


忍足の手は不二の手の中に。
つまり、この二人が手を繋いでいることになっています。
一見仲良しに見えるが、そうであることはまずあり得ませんね。
麻燐の為なら男とも手を繋ぐ、不二は潔いですね。


「(君なんかを麻燐に触れさせるわけないじゃないか。本当は僕だって嫌なんだから)」
「(相変わらず美人さんなのに酷いわ……。ほ、ほな、ほんの少しだけでも力を弱めて……)」


不二は全握力を忍足の左手に注いでいます。
痛がる忍足を麻燐はハテナマークを浮かべながらも楽しそうに見てます。


「それじゃ、部長が集ってる部屋に行こうか」
「ん?端っこからじゃないの?」
「今日麻燐が泊まるのは僕の部屋だからね。今のうちに荷物移動だよ」
「そうなんだー」


いまいち理解していないみたいですが、まぁいいでしょう。
全部の部屋を調べるならどこから探しても同じですからね。





「幸村かぁ……どこに隠れてそうかにゃ?」
「あいつは色々予想外やからの。どこに居てもおかしくない」
「……そういうものなのかなー」


苦笑いで返す菊丸。
でも何故か否定する気にはならない。


「………」
「?どったの、いきなり止まって」
「……菊丸、ここ探してみるぜよ」
「んー?……って、ここって食堂じゃん」


『食堂』と書かれたプレートを両手を頭の後ろに組みながら見る。


「あ!もしかして盗み食い……」
「阿呆言うんじゃなか。ここは案外広いからな。数人居てもおかしくないじゃろーが」
「あ、にゃるほどね」


菊丸は楽しげに食堂に足を踏み入れた。


「……そうじゃな……。お前さんはテーブルの下を探してくれるか?俺は調理場の方を見てくる」
「ん、分かった〜」


そう言って二手に分かれた。
菊丸はジャンプしたりスライディングしたりしながら気楽に『村人』を探していた。


「ん〜、いないにゃあ……。にーおーうー!そっちは……「行ったぞ、菊丸!!」……にゃ、にゃにゃにゃ!?」


仁王の声と共にこちらへと走ってきたのは丸井と切原。
二人とも調理場に居たようですね。
菊丸は慌てて出入口のドアの前に立つ。
出入口はもう一つあるが、途中にあるテーブルが邪魔をしていて下手すると捕まる恐れがあって二人は動けない。


「やっぱりお前さんらはここなんじゃな」


バレバレじゃよ、と仁王が鼻を鳴らす。
丸井と切原は背中をくっつけて身を小さくした。


「何だよ赤也、絶対に見つからないっつったのお前だろ〜」
「そ、そう言われても……相手は仁王先輩ッスよ?まさか引き出し全部開けるとは思ってなかったッス……」


どうやら鍋など大きな道具を仕舞う引き出しの中に隠れていたようですね。
意外な細かさを見せた仁王。


「観念しんしゃい。お前さんらの行動は見え見えなんじゃよ」
「……っち、まぁいーぜ。こうなったら潔く捕まってやるぜ!……………………赤也が!」
「へ?」


丸井が言った瞬間、切原は背中を押され仁王へと飛ばされる。
勢いがあったのか、二人はぶつかり合い大きな音を立てて倒れた。


「に゙ゃ!?」


それに驚いた菊丸は仁王たちを助けるべきが丸井を捕まえるべきかで悩んでしまった。
その怯みを、丸井は見逃さなかった。


「んっじゃー、アデューってな!!」


得意げにガムを膨らませながら机を飛び越えて入り口から外へと出ていきました。
逃げ足は速いものです。


「ちっ……逃げられたか」
「っま、切原は捕まえたからいいんじゃない?」
「ひどいッスよブン太先輩〜〜っ!」


切原は悔しさで座ったまま立ち上がらない。
仁王はとっくに立ち上がって丸井の逃げた方向を睨んでいた。


「落ち着けって。残り全員捕まえれば誰ともデートできないんだからさ」
「嫌ッスよ!俺は麻燐とデートがしたいんス!」
「阿呆。俺がそんなことさせんよ」
「う〜〜っ、いいじゃないッスか!仁王先輩は小さい頃から一緒に居たんッスよね!」
「そう。俺が大切にしてきたんじゃ。じゃからお前さんらに任せられんの」


仁王は切原に鬼の角を放る。
切原は反射的に受け取った。


「頑張って探せよ、ワカメ野郎」
「…………あ゙?」


仁王は言うとさっと立ち去った。
菊丸も状況を察し素早く後に続いた。
残された切原だけが徐々に赤目へと変化した。


「うぜえ……こうなったら、全員潰してやるぜ!!」


ここに本物の鬼がいますよー。
残っている村人は、切原に見つからないよう頑張ってください。