「おっひる〜」 麻燐は皆より一足先に食堂に入りました。 そこで少し料理を並べたりとお手伝いをし、皆を待ちました。 すると、どこからか地響きが。 「ってめぇ!年下のくせに出しゃばんな!」 「そーゆーあんたはもう隣ゲットしたじゃないですか!少しは譲ったらどーッスか!」 「退け!俺様が麻燐の隣だ!」 ドアは、丸井・桃城・跡部を中心に塞がれています。 その後ろからどんどんと波のように人が押し寄せてくるので正確な人数は分かりません。 ドアにつっかえてしまい、今のところ誰一人ドアから食堂へ足を踏み入れる者はいません。 どんだけ急いでるんですか。 「?皆どーしたの?」 そんな様子を麻燐はきょとんとした顔で見ている。 いえいえ、あなたへの愛が溢れているんですよ。 「くそくそ!邪魔なんだよ!さっさと通らせろ!」 「あっは、こういう時ってぶっ飛ばしてもいいのかなあ」 後ろもすさまじいですね! 色々な意味で! 前の3人が潰れてしまいそうです。 「……馬鹿ですか」 「……同感だ」 それを悠々自適に、どうでもよさそうに見ている日吉や海堂たち。 あんな先輩にはならないようにしましょうね! 「……通れねえ。こっちは腹減ってるってのに……」 そして、苛々しながら眺めている宍戸が動き出しました。 「げっきダサだぜ!」 後ろで、麻燐アイラビューなどほざいている忍足の頭をぐいっと掴み、集団を飛び越えました。 ……テレポートですね! その宍戸の姿に集団は「あー!」と声を上げる。 「亮ちゃん先輩!」 「よっ。隣いいか?」 「うん!」 宍戸、麻燐の隣ゲット。 残るポイントはもう一つの隣か目の前。 未だつっかえている集団。 さて、誰が勝利者に!? 「チッ……跳べ樺地!」 「ウス!」 潰れかけている跡部が何とか手を上にあげパッチンと指を鳴らしました。 ……さて、それが本当に良い選択なのでしょうか。 樺地は命令通り跳び、集団から一歩前に出ました。 「樺ちゃん先輩だ〜!一緒に食べよう!」 「ウス」 「かっ……樺地ーーーっ!!」 樺地が跳び越えようが踊ろうが、跡部たまは下敷きのままなのです。 樺地はもう隣に座りました。 さて、残るは正面。 「雑魚は引っ込んどりんしゃ………いだっ!」 仁王も何とか跳ぼうとするが、尻尾を誰かに掴まれ跳べませんでした。 掴んでいたのは…… 「抜け掛けはいけませんね。……仁王、くん?」 すぐ後ろでキラーンと眼鏡を光らす柳生。 ……仁王はぎく、という表情になる。 その表情を見た柳生は、 「俺の姿で飛び込もうとしても無駄ぜよ!」 と叫びました。 どうやら、今は入れ替わり状態なんですね。 「もー、皆〜……。早くご飯食べようよ〜」 麻燐は待ってます。 宍戸はもう食べてます。 樺地は姿の見えぬ跡部を見守ってます。助けようとはしません。 「「「(麻燐が待っている……!これは、次で決める!!)」」」 そう誰もが心に決め、次の瞬間にジャンプをしようとしたが、ある言葉によって止められた。 「何の騒ぎだ!今は飯時だろう!」 「「「真田(さん)!!」」」 宿舎とつながっている通路から真田が現れた。 一瞬で全員の目が真田に向けられる。 「ん?何で真田…んなとこから来たんだ?」 「ああ、昼食の前に立海用の練習メニューの書いてある紙を取ってこようと思ってな。一足先に部屋に向かったんだ」 「なるほどな」 宍戸が納得すると、真田は進んで麻燐の目の前の席に座る。 「「「なっ!!」」」 唯一の席を、意外な人物に取られてしまったことに全員は呆然とする。 真田は全く気付いてはいない。 「ほら、もうお前らの狙ってる席は埋まったぜ。もう適当に座れよ」 もぐもぐと大好きなチーズサンドを頬張りながら言いました。 集団はまるで生気が抜けたかのように崩れ落ち、ぽつぽつと立ちあがった人物から席につきました。 そんなにショックなんですか。 跡部や丸井は完全に潰れてしまっています。 あと数分で生死の境から帰ってくるでしょう。 「う……麻燐……」 「ってぇ……」 二人はほぼ同時に起き上がり、周りの様子を見ました。 「……!?何で真田が麻燐の目の前に座ってやがる!」 「そーだぜ!きったねえ野郎だな、このムッツリ!」 「!?何故そう言うんだ!」 いきなりの罵声に真田はショックを受ける。 だがその後、柳が二人を落ち着けるが、それでも納得しない二人。 そんな駄々をこねる二人を一喝したのは、 「……食事中に見苦しいマネしないでくれるかな。今俺は機嫌が悪いんだ」 それは朝からだと分かってます。 二人はすさまじい怖気を感じ、そそくさと空いている席に座った。 と、いうか。 さっきの集団の方が見苦しいと思うのですが。 貴方も混ざってましたよね。 「……今から表へ出せなくなるような発言を連発してあげようか?」 すいませんっしたああ! お願いですからナレーターに声をかけないでください。 そして、脅さないで……。 本当に止めて欲しいものです。 「ふふ、いいよ。今回は許してあげる」 ほっ……。 ごめんなさい。 強気になれないナレーターを許してください。 この後は、麻燐の目の前を取ったという理由も兼ねて、魔王と下僕たちのジェラシーを一身に受けた真田であった。 |