麻燐ちゃん、部室前に到着です。


「わー!おっきー!」


一度ドアの前で立ち止まり、ドアノブに手を掛ける。


「長太郎、早く…うわっ!」
「きゃっ!」


いざ開けて部室に入ろうとした時、麻燐は出入り口の少しの段差で転んでしまいました。
そして倒れこみ、下敷きになった相手は宍戸。


「だ、大丈夫ですかっ、宍戸さん!」
「ってー…お、おい、大丈夫か?」
「きゅ〜…」
「お、おい!何か出てるぞっ!」


何やら魂的なものが出て行くのを止める宍戸。
いくら宍戸の上に倒れたといっても、転んだ衝撃はありますからね。


「麻燐っ!」
「麻燐ちゃーん!」
「あ、跡部さんに忍足さん!この子が宍戸さんとぶつかって…」


鳳がどうしたらいいか、少しおろおろしている。
忍足と跡部はすぐ麻燐に近寄った。


「大丈夫なんか?」
「うぅ…あたた…あれ?麻燐は…」
「大丈夫か?」
「あ、麻燐は大丈夫!でも、あなたは怪我とかしてなぁい?」
「…っし、してねぇ…」


心配そうに顔を覗き込まれ、宍戸は思わずときめいてしまった様子。
麻燐は自分よりぶつかった相手の方が気になってるみたいです。
それも無事と分かり、


「良かった!それじゃあ、部室の中に入る!」


麻燐は宍戸の上から降り、部室の中へと入った。


「……跡部、あいつは何なんだ?」
「あとで話す。……レギュラー集めとけ」
「?お、おう」


楽しそうに部室のさらに奥へ入っていった麻燐を見て、宍戸は正気を取り戻し跡部に聞いてみる。
跡部にそう言われ、宍戸と鳳は素直に他のメンバーを呼びに行った。


「きゃはー!高い高いー!」
「……何してるんや、嬢ちゃんは」
「んあ〜…跡部ぇ、何か可愛い子供が樺地に登ってるC〜」


ジローが目を擦りながら跡部に言う。
その指さす先には、樺地によじ登っている麻燐の姿があった。


「わ〜!すごーい!たかーい!」
「……ウス」
「…樺地、よこせ」
「やんちゃな嬢ちゃんやなぁ」


跡部の言葉に、樺地はすぐに麻燐を両手で抱え、跡部の目の前に置く。
出会ってからというものの賑やかでずっと楽しそうにしている麻燐を見て忍足も思わず呟いた。


「あ〜楽しかった!ねぇ、おにーちゃん達もこの人に登ってみたら?」


もはや跡部達を先輩扱いしてなく、樺地を動物のように言う。
でもその目はとても純粋です。


「(あかん、跡部怒ってまうで…?)」


跡部と樺地は幼なじみ。
二人がいつも一緒にいるのを知っている忍足はさすがにまずい発言ではと跡部をちらりと見ます。


「麻燐……菓子やるから食ってろ」
「(…お、跡部が珍しく優しいやん)」


忍足は驚きながら跡部を見る。
ですがお菓子って……完全に麻燐は子供扱いです。
いや、子供なんですけどね。


「わーい!」


しかし麻燐はお菓子を貰いもしゃもしゃと食べ始めた。


「おーい、連れてきたぜー」


宍戸が正レギュラーたちを連れてきたみたいです。


「何だよ跡部ー」
「岳人、来ぃや」
「?なんだよ、侑士」


先にコートでウォーミングアップをしていたらしい向日は少し不満そうに、部屋に入るなり跡部を見た。
だがすぐに忍足が面白そうな顔で自分を呼び、隣に立たせる。


「今日から麻燐が男子テニス部マネージャーになった」
「「「……は?」」」
「……もしゃもしゃ」


跡部、忍足以外が疑問の言葉を出した。
麻燐はまだ夢中でお菓子を食べている。


「監督はいいって言ったのかよ?」
「即答だ」
「「「………」」」


皆が黙る。
そして麻燐をじっと見る。そして納得したのか何とも言えない表情になりました。
どうやら皆さんは榊太郎という人物がよく分かっているようです。


「お前らは麻燐がマネージャーやんのに反対なのか?」
「「「反対ではない(です)」」」


こちらも即答です。
どうやら、麻燐ちゃんはマネージャーとしてOKみたいです。


「良かったな、麻燐」
「うん!……もしゃもしゃ」


跡部が麻燐に向けて言うと、麻燐も受け入れられたことに気付いたのか嬉しそうに笑った。そしてまたお菓子を食べた。


「ほな、早速自己紹介といこか。俺は忍足侑士や」
「…お、おし…?」
「言いにくかったら、名前でええよ」
「ほんと?じゃあ、ゆーし先輩!…もぐ」
「ゆーし先輩……っ萌えやっっ!」


忍足、皆から冷めた目で見られています。
それに気づかない忍足はまた一人で悶えています。
先輩に対しての態度はなっていなくても、ちゃんと『先輩』て呼ぶ麻燐ちゃん。


「俺様は跡部景吾だ」
「けいご…うーん、景ちゃん先輩!」
「俺は3年の向日岳人だぜ!よろしくな!」
「よろしくね!がっくん先輩!」
「俺もがっくんと同じ3年生で芥川慈朗だよ〜よろしくね〜」
「ジロ先輩!よろしくね!」
「俺も3年で宍戸亮だ。まぁ、よろしくな」
「りょー先輩!よろしく!」
「俺は2年生の鳳長太郎だよ。よろしくね」
「チョタ先輩!よろしくー!」
「……俺は、」
「あーっ!」
「「「!?」」」
「おにーちゃん、これとそっくり」


そう言って取り出したのは跡部から貰ったお菓子の中にあった『きのこの山』。
…それにしても跡部、きのこの山持っていたんですね。


「………」
「「「(日吉…怒るだろうな…)」」」


麻燐ちゃんが言った言葉、それは禁句ワードだよ!


「……お前、ふざけ…」
「でもね、麻燐、きのこ大好きだからおにーちゃんも好き!」
「……っ!?」


少し関係がないと思いますが。
不意打ちなので日吉もびっくり。


「「「(日吉の奴……)」」」


他の人は嫉妬心丸出しです。
どうやら、麻燐ちゃんは皆から好かれたようですね。


「あ、それでね、名前は?」
「……2年、日吉若だ」
「わかし…?うーん、わか先輩!」
「ねーねーあなたの名前は?」
「…2年…樺地宗弘……です」
「かばじむねひろ…うーん、樺ちゃん先輩だね!」


最初によじ登っていようが、だ輩なのでちゃんと『先輩』はつけます。


「…どうだ?全員覚えたか?」
「うん!ここの皆はとっても優しいから!麻燐と、仲良くしてね!」
「「「(キューン!!)」」」


そして、これから麻燐争奪戦が始まろうとしていた……。





自己紹介
(失礼な奴だが、憎めないな……by日吉)


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