「あ、麻燐ちゃん」 5人が部室から出てきた。 そして、一番初めに声を掛けたのが幸村だった。 「どうしたの?そんな『どうぞ襲ってください』って言ってるような格好は」 優しく微笑んでいるが言葉は我が欲望のままにです。 開口一番そんな台詞が出てくるあなたが恐ろしいです。 「んーとね、さっき泡まみれになっちゃったからね、お着替え!」 それでも笑顔で返す麻燐は純粋以外何と形容すればよいというのでしょう。 周りの4人は気分が悪いくらいに真っ青な顔をしている。 「そうなんだ。ふふ、可愛いね」 「そう?ありがとー!」 頭を撫でられた麻燐が幸村に抱きついた。 「……麻燐」 「ん?なあに?」 「日吉の匂いがする」 一瞬にして空気が氷点下に辿り着きました。 「な、何でそんなこと分かるんだ……」 日吉が変なものを見るような目で幸村を見た。 何という勇気! それにしても、どんな匂いなのでしょう。 「やっぱ怖え……」 恐怖を再認識したのか、切原も呟く。 「幸村さん、まるでストーカーみたいですね」 鳳はまた喧嘩を売るような言葉をかけた。 「ふふ、また可笑しなことを言うね。抹消されたいの?」 笑いながら言う言葉じゃない言葉を、遠くから見たら天使のような笑顔の幸村が躊躇い無く言った。 「あ、図星でしたか?」 それに負けず鳳も笑顔で言う。負けていませんね。 「………ここってバケモノ多いなぁ」 溜息交じりで越前が呟く。 ここはそっとしておきたい雰囲気。火に油は注ぎたくないですね。 「あれ?君たち何やってるの?」 丁度良く現れたのは不二。 もっとマシな人を期待していたのにあっさりと裏切りました。 むしろ狙っているとしか思えません。 「ん?麻燐ちゃん……」 「?」 「下剋上の匂いがする」 麻燐を見ながらの言葉ですが、それはよく突き刺さります。 「(俺のことか!?せめて名前で言えよ……)」 日吉はその場から逃げ出したい気分になりました。 「それにしても、放っておいたら襲われそうな格好だね」 「うん?似合ってるってこと?」 「うん。できれば閉じ込めて誰にも見せたくない」 簡単に危険発言を言っちゃう貴方についていけません。 それにしても、この人たちはもう少し言葉をオブラートに包むということを覚えてくれませんかね。 「麻燐、不二なんかと居たら身体がいくつあっても足りないよ。俺と一緒に立海のコートに行こう?」 「何言ってるの。幸村なんかと居たら腰がいくつあっても足りないよ。僕の部屋に行こう?」 「「「(どっちも危険すぎるだろ)」」」 言ってる当人たちは言葉を選んで言っているのか不安になってきました。 「麻燐ー」 「あ、ジロ先輩!」 そんな中麻燐に抱きつきに来たのは芥川。人選についてはもう何も言うまい。 「麻燐が居ないと練習できなEー!一緒に氷帝のコートに来てー?」 「うん、分かったぁ。行くー」 そしてあっという間に芥川に手を引かれて行ってしまいました。 その時の芥川の顔と言ったら。 『ざまあみろ』 とでもいうような顔でした。 ……さて、残されて困るのは決まってます。 「……君がいきなり出てくるから行っちゃったじゃないか」 「君が麻燐を渡さないから一緒にイけなかったじゃないか」 「(変換が違う……)」 「くす、越前。何か言った?」 「い、言ってはないッス……」 黒い塊のような嫉妬は怖いですね。 しばらくは収まりそうにないです。 それにしても…… 不二、一体あんたどうしたんだ。 |