「よし、じゃあ俺の服を貸してあげるよ」


一番に名乗り出たのは鳳。同時にジャージも脱ぎだします。


「お前はジャージの下Tシャツだろ?ユニフォームじゃないからだめだ」


それを見て日吉が指摘する。確かに、脱いだジャージの下はいつもの白いTシャツ・
これには何も言えない鳳。
ということで鳳はだめ。


「んじゃっ、俺の貸してやるよっ!」


満面の笑顔で言ったのは切原。


「……お前、ジャージどこにあるんだよ」


半袖ユニフォーム姿の切原を見て言う日吉。


「……あ。そういやもう暑いから持ってきてねえ……」
「論外じゃないか」


ってことで切原もだめ。


「越前、お前はジャージ持ってんのか?」


悔しいですが、麻燐を凍えさせるわけにはいきません。
切原が越前に聞くと、


「持ってきてるけど、昨日汚れたからあの洗濯物の中」


泡まみれになった洗濯物を指さしながら答えた。


「……それなら、越前くんのもだめだね」


苦笑いをいながら鳳が言う。
……と、なると。


「………俺か?」
「だな。くやしーけど」
「日吉、またイイトコ取りだね」
「……ま、よかったじゃん」
「お前らは何勘違いしてる?」


切原は口を尖らせながら、鳳は面白そうに、越前は生意気にそれぞれ呟く。
何かよからぬことを思われているようで日吉は眉を寄せた。


「わか先輩……いい?」


だが麻燐が申し訳なさそうに上目で日吉を見つめ、日吉はそれ以上何も言えなくなった。


「……はぁ、しょうがないな」
「ほんとっ?ありがとうっ!」


麻燐は笑顔で言った。
そして、日吉はジャージを脱ぎ麻燐に渡す。


「「「………っ」」」


そして、ジャージを着たその姿を見て全員が口元を抑えました。
麻燐の体に対して日吉のジャージは大きく、ファスナーを閉じるとワンピースみたいになっていたからです。


「わぁ……わか先輩のあったかい!」
「麻燐ちゃん、似合ってるよ」


似合う似合わないの問題ではないと思いますが。


「うーん……これならスカート脱いでも大丈夫そう!」
「「「!!」」」


そう言って濡れて肌に張り付き気持ちの悪かったスカートも脱ぐ麻燐。
いくらジャージで見えないとは言え、大胆な行動でうs。


「なっ!?麻燐……っ」


切原が顔を赤くする。
他の面々に声には出さなかったものの、見てはいけないという条件反射で目を逸らしました。


「よーし、動きやすくなった!じゃあ、麻燐服干してくるっ!」


そして自分の服を持ち、外に出て行く。
その後ろ姿も危ない。穿いていないという事実も相まって余計にハラハラします。
裾がギリギリのところにあるので一応大丈夫ですが。


「……あれで本当に気にしてないの?」


越前が呆れて呟く。


「……まぁ、麻燐だしな」
「ほんと、可愛いなぁ」


いつも大体あんな感じなのか、日吉は複雑ながら言う。
鳳も頷きながら、微笑ましそうに笑った。


「……先輩たちに会ったら何て言われるか」


そんなことを心配しているのか、日吉は気が重そうに呟きました。
あのジャージは日吉のですからね。


「まぁ、大丈夫なんじゃない?もし変態が変なこと言ったら俺が言い返してあげるから」
「………」


少し複雑な表情の日吉。
鳳に守られるということも、変態というワードで誰かが分かることも全てが不安ですね。


「ちぇー、ずりぃよなぁ」


羨ましそうに日吉を見る切原。
備えあれば患いなし、をこれで体感できましたね。


「………まだまだだね」


その姿を見て呟く越前。
後輩たちは仲が良くて安心です!


「干してきたっ!」


笑顔で麻燐が戻ってきました。


「いつ乾くかなぁ?」
「うーん……今日はいい天気だし、午後の練習が終わるころには乾くんじゃないかな」
「そっかぁ……。じゃあ、それまでわか先輩のジャージ……いい?」
「……ああ、いいぜ」
「えへ、ありがとうっ」


嬉しくて飛び上がる麻燐。


「「「じっとしてろ!」」」
「?」


いつもの麻燐の癖とはいえ、中が危ないと思った4人は麻燐を押さえる。


「……麻燐、その姿であまり暴れるな」
「ん……?わかった!」


理解はしてないが、否定する理由もないのか快く返事をした麻燐。


「「「はぁ……」」」


服が乾き終わる夕方まで心配な4人でした。