「はーっ。今日は皆すっご練習してたねっ!」


夕飯も素早く終わり、部屋で一休みをしている麻燐と同質の皆さん


「ああ、特に切原がな」
「あんなの八つ当たりだろっ!?」


冷静に言う日吉に噛みつくように言う切原。どうやら切原は散々だった様子ですね。
何となく擦り傷が多いです。


「まぁまぁ、恋は甘ないっちゅこっ……「あんたに言われたくねーよ」……相変わらず酷いなぁ」


一番酷い目に遭ってるのは忍足、貴方ですから。


「……お前にはいい練習になったんじゃねぇか」


海堂が皮肉っぽく呟く。
あらら、嫌な雰囲気になりそう……。


「へっ、どうせ羨ましいとか思ってんだろ」


海堂は麻燐とは少し離れた所に居ましたからね。
あまり関係ない話題ですが、海堂は眉を寄せる。


「てめえには関係ねーよ」


ぎろり、睨む海堂。
でも切原も負けずに、


「まぁ、次頑張りな〜」


挑発しました。
全く、最近の2年生は。
1年の越前はその攻防を聞いて呆れていますよ。


「なになに〜?どうしたの?」


二人が睨みあってる中に平気で入る麻燐。
麻燐には恐怖≠竍怯み≠ニいう言葉は無いんですね。羨ましいです。
ところが見かねた日吉が、


「……やめろ、お前ら」


面倒に思いながらも仲裁しにいきました。
なんだかんだ面倒見がいいですよね。
それに対して意地の強い二人は……、


「やんのかよっ!」
「俺はいつでもいいぜっ!」


やっぱり、聞いてません。
麻燐はにこにこと二人を見てます。
何をどう解釈しているのでしょうか。


「やめないと、古武術で縛り付けるぞ」


日吉は眉を思い切り寄せて言いました。凄い迫力です。
まるで黒が宿ったみたいです。
元々騒がしいことが嫌いな性分ですし、何より麻燐の前ですからね。


「う……。わ、分かったよ……」
「……しょうがねぇ」


二人は、ある人たちの顔が思い浮かんだようです。
え、誰かって?私の口からは言えません。


「麻燐ちゃんー、2年は放っといて俺と一緒にお風呂入ろなー」
「お風呂?」
「「「そこのあんたは何やってんだよ」」」


さすがに見落とすわけないですよね。
そんなニマニマした顔で麻燐を連れて行く姿を見れば。


「うわ、こっわ。全員して睨まんでもえーやん」
「忍足さん、麻燐と一緒にお風呂入ったら訴えますよ」
「……不二先輩に言いつける」
「何でや!?」


形だけですが、しくしくと泣き真似をしています。
狙ったのかは分かりませんが、2年の言い合いは終わり、話題も自然と変わります。


「麻燐、お風呂入りたい〜!」
「お、じゃあ今から風呂まで行こうぜ」
「……そうだな。麻燐、場所分かるか?」
「うーん……分かんなぁい」
「やっぱりな……。麻燐、着替えを持て」


麻燐が笑顔で挙手をすると、切原もそれに賛成する。
時間も時間だしと日吉も麻燐に聞くが、相変わらずの返答。


「うん!」
「忘れ物は無いか?」
「うん!」
「よし、なら行くぞ」
「うん!」


日吉、過保護です。
何だかんだ言って、麻燐が心配なんでしょうね。
それから、同じ部屋のメンバーで1階の風呂場へ向かいました。


「あれ?皆はそっちなの?」


男湯へ向かう3人を見て、麻燐は言いました。


「当たり前でしょ。男女別なんだから」
「えー、麻燐一人……?」


溜息をつきながら言う越前に、分かってはいるものの寂しがる麻燐。


「寂しいん?ならやっぱ一緒に……「風呂の中で沈みたいですか?」……遠慮しときます」


その気持ちをいち早く察した忍足が寄り添おうとするが、言葉選びがアウトです。
日吉ならやりかねない。忍足は潔く引き下がりました。


「大丈夫だって。自分家の風呂が少しでっかくなったって思えばいーんだよ」
「そーなの?」
「ああ。なら、また出たら一緒に戻ろうなっ」
「うん!じゃあ、またねー」


切原が笑顔で手を振りました。だんだんと麻燐の扱いがうまくなっていってますね。
そして海堂は無表情で、越前はちらりと見てすぐに視線を逸らし、日吉は忍足を引きずりながら、皆さんお風呂へ入りました。