「はぁ〜、麻燐まだかなー」
「俺らんとこが一番最後かよ?」


立海の皆さんは休憩しながら麻燐の話をしていました。


「まぁ、そう言わずに。麻燐さんだって仕事がありますから」
「そうじゃの……。麻燐一人で大丈夫か心配じゃがな」
「ふふ、仁王は幼馴染の心配してるんだね」
「プリッ」
「それにしても遅いッスよー」
「そうだぜぃ。早く麻燐に会いてぇ」


どうやら、ドリンクを待ってるんじゃなくて麻燐を待ってるみたいですね。


「みんなぁ〜っ!お待たせー!」
「おっ来た」
「遅いぜ〜麻燐!」


麻燐の声が聞こえた瞬間に座っていた切原と丸井が立ち上がりました。
そして、ドリンクを運んでいる麻燐に駆け寄りました。


「遅れてごめんね?ドリンク温かくなっちゃったかも……」
「そんなことない。この気候だ。そう早くに温かくはなるまい」
「そうだぜー。ドリンク、美味いぜぃ」
「ほんと!?よかった!」


しげしげと呟く麻燐に、柳がさっとフォローする。
丸井もばっちりだと親指を立てた。


「ああ。それにしても、麻燐ってドリンク作れたんだな!」
「うん!樺ちゃん先輩と一緒に作ったの!」


さり気なくひどいことを切原は言っていますが、麻燐は気にしていません。


「ほう、それはご苦労だったな」
「は、はい……」
「何故俺の時だけそんなに怯えるんだ!?」


普通に声をかけたはずですが、麻燐は真田を見ると怯えるようになりました。
怖いイメージは中々引きません。
でも麻燐が敬語を喋るなんて、真田……やるねー。


「副部長は怒鳴りすぎなんスよ〜」
「くくっ、真田は怖いからの。顔が」
「なっ!」


わかるわかると切原と仁王は言う。
心外そうに真田は眉を寄せた。


「ほれ、麻燐。俺と一緒だったら真田は怒鳴らんぜよ」
「……ほ、ほんと……?」


仁王は麻燐を抱き寄せました。


「ああ。もし怒鳴ったら俺が真田に鉄拳食らわすけぇ。安心しんしゃい」
「う、うん……」
「なっ、仁王っ…たるんd「いいのか?弦一郎」……ぐ」


言った傍から……。
柳が止めました。さすが参謀、ナイスフォローです。


「真田、麻燐には笑顔で話すのが一番だぜ〜?」
「ふふ、そうだね。笑ったら麻燐だって笑うよ」
「……幸村部長のは怖いッスけど…」
「赤也?何か言った?」
「……な、何もッス…」


切原の言いたい事はよく分かります。
ですが地獄耳の持ち主の幸村には言わない方がいいです。


「……でも、真田に笑顔は無理なんじゃねぇか?」
「……んー……そうかもな」


改めて話題を戻したジャッカルが言う。
一拍考えて、丸井も同意しました。
真田の笑顔。それは誰も見たことがないようです。


「……今までのデータを振り返っても、弦一郎が笑顔を見せた記録は無いな」


そりゃそうでしょう。


「真田、笑ってみろよ」
「む……。俺が……?」
「他に真田なんて居ないでしょ?」
「そ……そうだな」


丸井の言葉に難しそうに眉を寄せた真田。
しゃきっとしない態度に、幸村が淡々と言います。素直に反応した方がよさそうですね。


「弦ちゃん……笑うの?」
「……みたいじゃの」


未だ麻燐は仁王の腕の中です。


「……無理だと思うけどな」


小さく呟いたジャッカル。
私もそう思います。


「じゃ、副部長、笑ってみてください。こうやって!」
「………ふっ」


切原が見せる笑顔を見て笑顔を作っている真田。


「……真田、不気味だぜ」
「む……」


笑いのレッスンは切原と丸井がしています。


「……真田くん、今まで高笑いしかした事ありませんからね」
「そうだな。普通の笑顔を作るなど、弦一郎には無理だ」


分かっているなら止めましょうよ。


「……副部長、怖いッス……」
「……笑っているのにか?」
「……い、いや…笑い?」
「そうだ。……渾身の笑顔のつもりだが」


段々と二人の笑顔まで奪う真田の笑顔。
……怖いんですね。


「……仁王」
「なんじゃ、ブン太」
「真田に笑顔を作らせるなんて無理だぜ……」
「……じゃろうな」
「幸村部長……俺、もう無理ッス」
「ふふ、そうみたいだね」


とうとうギブアップ。
始めから分かり切っていた結果ですけどね。


「まぁ、最初から真田の笑顔を見たいとは思ってないけどね」
「!?」


相変わらず酷いお言葉ですね。


「……と言うことで、麻燐。また真田を修行させるから。ほら、笑って?」
「う、うん……」
「そう。……じゃあ、頼んだよ、ジャッカル」
「お、俺!?」


とばっちりを受けるのは貴方の役目です。
頑張ってください。


「麻燐、もう仕事に戻るんか?」
「うん!皆も練習頑張ってね〜!」
「おう、まっかせろぃ!」
「じゃ、またな〜」
「うん!……弦ちゃん、が……頑張ってねっ!」
「!……麻燐……」


麻燐は言って、コートの外へと走っていきました。
頑張って真田にも応援の言葉をかけましたね。


「……真田くん。麻燐さんも応援していますよ」
「くく、頑張りんしゃい」
「む……」


麻燐は嫌っているわけじゃないんですよ。
良かったですね。


「ふふ、麻燐の期待を裏切らないようにね」
「……う、うむ」


余計なプレッシャーをかけてあげないでください。
麻燐のお仕事、ドリンク渡し終了!