201号室。


「うきゃー、ひろーい!」


部屋に入るなりはしゃぐ麻燐。
宿舎は榊が手配した場所らしく、さすがに広く綺麗な所ですね。


「お、ほんとだ。結構広いじゃん!」


2つの荷物を置く切原。
麻燐のを持っててくれたんですね。


「わ!見て見てわか先輩!海が見えるよ〜!」
「本当だな」


窓のカーテンを開けて景色を見た麻燐がはしゃぐ。
ちょうど建物の裏側にあるようです。


「入りた〜い!」
「……馬鹿。まだそんな時期じゃないじゃん」
「む!麻燐馬鹿じゃないもん〜!」


越前の言葉にぷくっと頬を膨らます麻燐。
同級生もいて、この部屋は安心ですね。


「はいはい!俺は麻燐ちゃんの水着姿が見たいわ!」
「……忍足さん、今すぐ海に突き落としましょうか?」
「すんません堪忍や」


ベランダの下にすぐ海がありますよ。
忍足は本当に懲りませんね。


「……ふしゅ〜(この人、本当に天才なのか?)」


海堂、心の中で思います。
口にしないのが海堂の優しさですね!


「……うんしょ、うんしょ……」
「?何してんだよ、麻燐」
「あのね、ベッドをくっつけてるの!」


切原が疑問を口にすると、麻燐は笑顔で答えた。
横に並んでいるベッドをひとつにくっつけようと一生懸命動かしてた様子。


「何でだ?」
「だって、皆で寝るでしょ?」
「…ベッドは6つもあるだろ?」


人数の都合上一部屋に5人ずつの部屋割ですが、基本一部屋に6つベッドがあります。
それを全てくっつけようとしている麻燐に対し、日吉は疑問符を浮かべている。


「だって……皆と一緒に寝たいもん……」


それを察したのか、日吉の顔を見上げる麻燐。


「俺も賛成や!麻燐ちゃん、勿論俺の隣で……「忍足さんの隣じゃなかったらいいぜ」……なんでや!?」
「「「(絶対麻燐に手出すだろ)」」」


会って間もない切原、海堂、越前でも分かること。
この部屋には忍足だけでなく日吉という監督者がいて良かったですね。


「じゃあ、俺の隣なっ!」


切原が笑顔で手を挙げました。


「うん!赤也のとなり〜!」


麻燐もその気です。


「……ふん、勝手にやってろ」


海堂、少し呆れ気味。


「あれぇ?薫ちゃんは?」
「おい待て。それは俺のことか?」


珍しく反射良く海堂が聞きました。


「うん!だって、薫≠チて名前可愛いもん!」
「か、かわっ……」


予想外の言葉に海堂の顔が真っ赤になっていきます。
そういうところも可愛いですよね。


「ね、いいでしょー?」
「……っ、ふ、ふしゅー……」


流石の海堂でも麻燐の笑顔には勝てないみたいです。


「ねぇねぇ、薫ちゃんはどこがいーい?」
「……お、俺は別に……端でいい」


麻燐を直視できず、背を向けてしまいました。


「そうなの?…んじゃあ、隣は……「おr「俺ですね」……わか先輩!」


日吉、忍足が手を挙げる前に名乗り出ました。


「「(まるで保護者だな……)」」


海堂と切原は思いました。
本来なら忍足を憐れむところですが、同情の余地はなさそうです。


「リョーマくんは?」
「忍足さんの近くじゃないならどこでもいい」


しれっとそんなことを言う越前。
確かに、今までの忍足を見ていたら警戒する気持ちも分かります。


「んなっ……。俺の扱い酷すぎやん……」


こんな忍足でも、この部屋では一番年上。
……色々と頑張ってくださいね!