「よし、皆集まったな」 遠くからでよく見えないが、少し目や鼻の頭が赤いのは全員スルーしている。 「この3校合同合宿は、5日間行われる。各々の学校にも公休として申請してある」 簡単な内容は事前に書面で伝わっていたため、確認がてら榊は言う。 「少ないと思いまーす」 「もっと麻燐と一緒にいたいでーす」 「静かに。麻燐はお前たちにはやらん」 桃城と切原が茶々をいれるが、榊は毅然とした態度で言う。 麻燐はあなたのものでもありませんけどね。 「練習内容等はその日の朝に掲示される。そして気になる部屋割りだが……この合宿は5日の間で学校の括りに捕らわれずお互いを高める事を最終目標としている。なので、良きライバルを多く作るため、部屋は3校交えて組んだ」 「「「えぇっ!?」」」 驚きの内容に皆さん思わず声を上げます。 てっきり、同じ学校のいつものメンバーだと思ってたようですね。 「では、スクリーンを見てくれ」 「うわー、どの部屋になるかなー?」 麻燐はわくわくしながらスクリーンを見上げています。 そして、部屋割りがスクリーンに映し出された。 2階 201 忍足 日吉 切原 海堂 越前 202 芥川 丸井 桃城 大石 河村 203 跡部 幸村 手塚 樺地 真田 204 宍戸 仁王 不二 鳳 桑原 205 向日 柳生 菊丸 乾 柳 「「「麻燐は!?」」」 全員が口をそろえて言いました。 やっぱり、一番気になってるんですよね。 「麻燐の部屋は?」 自分の名前が無いことに気付いた麻燐も、ステージに居る榊に声を掛けました。 「ああ、麻燐なら私と同じ部y……「「「いっぺん死ね!!」」」……ぐほおあぁっ!!」 一斉に皆からスマッシュを食らいました。 いつ取り出したのか分かりませんが、ピンポイントで当てるなんて凄いですね。 先の放送からいきり立っていた皆さんですが、これで気持ちも晴れたでしょう。 「………」 43は意識不明です。残念ですが、今回も仕方なさそうです。 「麻燐、太郎ちゃんと?」 「あんなん43の妄想や。気にしんとき」 「……じゃあ、麻燐は一人部屋になっちまうぜ?」 心配している表情の宍戸。過保護ですね。 「というか、女子なんだから一人部屋が普通でしょ」 呆れながら発言する越前。その内容はごもっともです。 ですが、 「麻燐一人やだー…。皆と一緒がいいよー…」 悲しそうに眉を下げて言う麻燐。 合宿ということで、皆とのお泊りを楽しみにしていましたからね。 「「「(ずっきゅーん!)」」」 やはり、こうなりますよね。 「じゃあ麻燐、俺の部屋に来なよ」 「抜け掛けはいけないな。僕の部屋においで?」 「違うC〜!麻燐は俺の部屋に来るの!」 幸村、不二、芥川がそれぞれ麻燐を誘う。抜け目がないというかたくましいというか。 またも終わりなき取り合いですね。 「幸村の部屋はだめだよ。病気が移っちゃうかもしれないでしょ?(訳:誰が君の部屋なんかに行かせるのかな)」 「ふふ、不二の部屋に行ったら不二みたいに性格が悪くなっちゃうよ(訳:君のところに行ったら麻燐が可哀想だよ)」 「まぁまぁ、そうもめないで〜。俺のところに決まってるじゃん!(訳:他校はでしゃばんないでくれる〜?)」 あらあら、どす黒い空気。 皆さん裏側での会話がお上手で。 「……これ、絶対決まらねぇぜ」 「……そうですね」 もう皆さんこの流れの意味が分かってます。 「ちっ、世話が焼けんな……。合宿は5日間だろ?1日ごとに部屋を変えてけばいい話じゃねえか」 跡部が提案しました。 こういった時のまとめ方に迷いがないですね、さすがのカリスマ性です。 「そ、そうだね。それが一番いいと思うよ(これ以上問題を発展させたくない……)」 大石も賛成のようです。 良い方向へと誘う最善手を打つ、流石青学の良心です。 「ん〜〜…少し残念だけど、仕方ないかな」 「うーん、幸村のあとって言うのが気に入らないけどね」 喧嘩なら他でやってきてください。 ですが大きな文句はないらしく、賛成されました。 「分かったんなら移動しろ」 43亡き今、主導権は跡部が握っています。 っと失礼、43はまだ生きています。 「えーっとぉ、それじゃあ今日は……ゆーし先輩の所だ!」 「よし。なら一緒に行こか」 忍足が図々しくも麻燐の腰に手を回しました。 手を繋ぐという方面じゃないところが忍足らしいですね。 「麻燐ー!俺も一緒に行くぜ〜」 二人の間に切原が入りました。忍足を押しのける形で。 勢いの余り、忍足は床に倒れています。 「……忍足さん。何床にへばりついてるんですか?」 「……ふしゅ〜。……置いてくぜ」 他のルームメイトである日吉と海堂も麻燐の後について行きました。 「……最近の2年は俺を何やと……っ」 今度こそ真剣に悩み始めた忍足。 この5日間で先輩という威厳を取り戻せるといいですね。 |