「わぁー神奈川ひさしぶりぃー!」


神奈川に着いた時に麻燐が嬉しそうに言った。


「来たこと、あるのか?」
「うん、神奈川にはね、麻燐の幼馴染がいるのー」
「そうなのか?」
「うん。すっごくテニスが上手なの!」
「「………」」


この時、2人は本当に嫌な予感がしました。





「着いたー!」


そして立海に着きました。


「はぁ……どうして麻燐はこんなにテンションが高いんだ?」
「やっぱ、幼馴染のことがあるからだろ?」
「……俺、大体予想がつきます」
「……奇遇だな、俺もだぜ…」


日吉の重たい言葉に宍戸も気力の無さそうな声で呟いた。


「ほら、行こーよー」
「……麻燐、菓子は?」
「んーとね、電車の中で全部食べちゃった」


にこっと笑う麻燐に、二人は頭を抱えた。


「……マジかよ」
「……うるさくなりそうだ」


そしてテニスコートへ向かうと、こちらから声をかけるまえにこちらに気付いた人物がいた。


「ん?あれっ?氷帝の宍戸さんと日吉じゃん」
「……なんだ、切原か」
「お、なんだとは酷いッスねー」
「いいから他のレギュラーを呼んでくれ……」


早く終わらせたい、と日吉は思いました。


「ったく、人使い荒いねぇ。ちょっと待ってろよー」


そして切原がレギュラーたちを連れてきました。


「ほら、呼んできたッスよ」
「おう」
「む、氷帝の宍戸と日吉か。今日は何の用で「あぁっ!まーくん!「「「まーくん!?」」」
「麻燐……久しぶりやのぅ」


真田の言葉を遮り驚きの言葉を発したのは麻燐。
その言葉にさらに驚いたのは宍戸、日吉、立海一同。
そしてまーくんと呼ばれたのは仁王だった


「まーくん!会いたかったー!」


ちゅっ。


「「「ええー!?」」」


麻燐は仁王の頬にキスをしました。


「!?麻燐?何やってんだ!?」


宍戸が慌てて麻燐に駆け寄った。


「?だってね、まーくんは、幼馴染に会ったときは、ほっぺにちゅってするって教えてくれたんだよ」
「プリッ」
「「(麻燐……騙されてる!)」」


相手はペテン師仁王ですから。
純粋な麻燐に変なことを覚えさせるのは止めていただきたい。


「に、仁王……そのようなことを教えるなどたるんどるぞ!」
「真田、うるさいいよ」
「す、すまない……」


不純異性交遊を目の前で見せられ、狼狽える真田。
ですが流石立海の魔王様。
そんな真田を一言で黙らせました。


「…ふふ、仁王は羨ましいね。こんな可愛い幼馴染が居て」


幸村の周りは黒いオーラで周りが充満しています。


「そうだぜぃ、何で俺たちに紹介してくんねーんだよー」
「お前さんらに紹介した後の事は予想できちょる」


ずるいと言いたげに丸井も責めるようなことを言う。
今みたいに麻燐の取り合いになると分かっていたのか、仁王はしれっと言った。


「確かに可愛いッスねー!えっと、麻燐って言ったっけ、1年?」
「うん!1年せー!テニス部のマネージャーなの!」
「ふふ、可愛いね。無邪気で、初々しくて、甘そうで……」
「「「(最後の感想はおかしい!)」」」


でも突っ込めません。黒すぎですから。


「……自己紹介がまだだったな」


絶対零度の沈黙から一番に言葉を発したのは柳。
それもそうだねと、幸村の周りの空気は少し軽くなった。


「俺は幸村精市。よろしくね」
「うん!よろしく!」
「俺は柳蓮二だ」
「私は柳生比呂士です」
「真田弦一郎だ」
「よろしくっ!」


そして怒涛の自己紹介が始まります。


「俺は丸井ブン太。シクヨロ」
「うんーしくよろー!」
「俺は切原赤也。よろしくな」
「髪の毛くるくるだー!」
「あ、おいっ!遊ぶなっ!」
「ふわふわーっ」
「赤也、麻燐に言っても無駄じゃよ」
「………」


確かに楽しそうな麻燐を見ては無下にすることができず、結局切原の髪は麻燐に遊ばれたままになりました。


「俺はジャッカル桑原だ」
「……じゃっかる?」
「言っとくが、本名だ」
「ふむふむ……うん、頑張って覚える!」
「お、おう……」


絶対間違える……そう確信したジャッカルであった。


「まーくん、髪長くなったよねー?」


今度は仁王のチョロ毛に触る麻燐。


「そうか?俺より、麻燐も長くなったのぅ」
「えへへー。まーくんが『伸ばしたら可愛い』って言ったからー」
「なんじゃ、それで伸ばしてくれたんか?相変わらず麻燐は可愛いのぅ」
「「「(何だこの入り込めない雰囲気は……)」」」


完全に蚊帳の外ですね。幼馴染との差は激しいです。


「……麻燐、そろそろ時間だぜ?」


ですが今は氷帝テニス部マネージャー。
主導権はこちらにあります。
だがそれ以上に早く帰りたい思いでいっぱいだった宍戸は声を掛ける。


「え?あー、ほんとだー!じゃあ帰らないと!」
「麻燐ちゃん、帰っちゃうの?」
「あ、ゆきちゃん……うん、帰らないと、皆が待ってるからー!」


寂しそうに言う幸村だが、麻燐は迷いはありません。
手を振りながらどんどん姿が見えなくなる麻燐。


「麻燐ー!合宿、楽しみにしてっからなー!」
「麻燐もー!」


切原の声にも元気に笑顔で答えます。


「麻燐、前を向いて走れ」
「お、おいっ、危ねぇぞ!」
「えっへへー、平気だよっ」


こうして立海に別れを告げ、氷帝へ戻った。


×