「ねぇ、まずはどこに行くの?」
「そうだなぁ……都内だし青学行くか?」
「そうですね、近いですからね」
「よぉし!せーがくへれっつごー!」
「うわっ、ちょ、引っ張るな!」
「えへへー」


2人は麻燐に引っ張られ走ること数分。
すぐに場所が分からないことに気付いた麻燐は、逆に二人に手を引かれることになり無事に目的地に着きます。


「きゃはー!ここがせーがく!」
「はぁ……何だか嫌な予感がするぜ」
「……麻燐が居る時点で予想は出来ますよ」


初めての他校との交流。麻燐はわくわくしています。
そのテンションの高さが目に見えて分かるため、二人の気はますます重くなります。


「麻燐、お前は菓子、食ってろよ」
「分かった!…もしゃもしゃ」
「日吉、行くぜ」
「はい」


しっかりと麻燐にお菓子を装備させ、準備完了。
いざ青学男子テニス部へ。





「あっれー?氷帝の宍戸さんじゃないッスかぁ?」


部室へと向かう途中、横から突然声をかけられました。


「おっ、青学の桃城じゃねぇか」
「あ、日吉さん」
「……チビ助」


見知った顔だと分かり、宍戸は笑って答える。
桃城の傍に越前もいたため、日吉も思わず因縁の相手をまじまじと見た。


「……もしゃもしゃ」


麻燐はお菓子を食べています。


「何しに来たんスか?」
「ほら、明日合宿だろ?その挨拶だ」
「挨拶?そんなの明日すればいいじゃないッスか」


ごもっともです。


「いや……まぁ、色々あってな」
「「?」」
「まぁ、部室まで案内してくれよ」
「分かったッス」


断る理由もないため、快く案内をしてくれる二人。
そして青学レギュラー全員と久しぶりの再会を果たします。


「……それで、何だ?」
「ま、ちょっとした挨拶だぜ」
「三校合同はそうそうない機会ですからね、よろしくお願いします」


手塚の言葉に宍戸も少しの苦笑と共に返す。
日吉はこうなることを想定していたのか、丁寧に挨拶を述べた。


「もしゃもしゃ」


麻燐はお菓子を頬張っています。


「こちらこそ、合宿は楽しみだよ」
「うん、良い合宿になるといいな」
「そうだな……データが取れる」
「おいおい、程々にしてくれよ」


不二と河村も笑顔で口を開く。
乾は別の意味でも楽しみなのか、不吉な笑みを浮かべています。
それに苦い思い出があるのか、宍戸が困ったように笑った。


「もぐもぐ」


麻燐はお菓子を味わっています。


「ふしゅ〜…あんたとはまた対戦したいッス」
「海堂、機会があったらやりてぇな」
「チビ助……次は負けねぇぞ」
「ふぅん、俺もだけど」

「もしょもしょ」


麻燐は相変わらずです。


「くす、楽しく話してるところだけど、そっちの可愛い子は誰かな?」


ようやくその件について不二が口を開きました。


「「(気づかれたか……)」」


気付かない方がおかしいです。


「あ、あぁ……こいつ……はな」
「……うちの、マネージャーです……」


宍戸は言葉を濁そうとしたが、誤魔化せないと思い日吉が渋々紹介をした。


「さっきからお菓子ばっかり食べてるね」
「へー、結構美味そうじゃん。俺にもくれよー」
「ほぇ?」


急に話し掛けられて、麻燐は食べていたポッキーを銜えながら上を向いた。


「「「(か、可愛いっ!)」」」


麻燐ちゃん、いっきに皆のハートを掴みました。


「……あんた、1年?」
「うん!1年せー!あなたも?」
「そう。越前リョーマ」


珍しく自分から話しかけた越前。
同じ年だと思い、親近感が湧いているのでしょうか。


「あー!おチビ、抜け駆けはいけないにゃー!俺は菊丸英二!」
「麻燐は、麻燐っていうのー!」
「へぇ……麻燐ちゃん、って言うんだ」


名前が分かり、意味深に呟く不二。
はたして開眼する意味があるのでしょうか?


「へぇー、かっわいいなぁ、お前。俺は桃ちゃんでいいぜ」


そうして麻燐の頭をわしゃわしゃする桃城。
桃城だから許される行為ですね。


「きゃははー」
「よ、よろしくね、麻燐ちゃん。俺は河村隆」
「俺は、大石秀一郎」
「……海堂薫だ」
「部長の手塚国光だ」
「えーと、えーと……」


マネージャーだと分かり次々と自己紹介を始める青学一同。
麻燐ちゃん、名前を必死で覚えています。


「……うん、覚えた!」


どうやら、覚えることができたみたいですね。


「……んじゃ、俺たちはここで」


一応自己紹介が終わったので帰ろうとする。
当初の目的は達成されました。


「もう帰っちゃうんだ……寂しいな」


ですが、不二から何かオーラが出ています。
後ろ髪を引かれるような、嫌な気配を察した宍戸は苦笑いをします。


「あ、ま、まぁ…な(だから嫌なんだよっ、こういうの!)」
「………(鳳と同じオーラだ)」


日吉も日吉で察しました。
帰るにも帰れない状態です。


「あ、そういえば、もうひとつ行く所があったよね?」


ここで救世主、麻燐ちゃんの言葉。


「そ、そうだな!」
「早く行かないと日が暮れますね」
「そっかー、寂しいにゃー」
「そうだ!皆にこれあげる!」


そう言って麻燐が取り出したのはきのこの山―――


「わか先輩に似てるでしょ?」
「……麻燐、どうしてこれを?」


日吉、麻燐に問います。
日吉にとっては因縁のきのこの山ですからね。


「麻燐ね、きのこの山大好きだから!皆にもおすそ分け!」
「………」


そんなことを言われると、怒るに怒れません。日吉は複雑そうに口を閉じました。
居ますよね、何をやっても許される子って。


「麻燐」
「ん、なぁに?」
「たけのこの里は無いのか?」
「「「(手塚(部長)!?)」」」


突然発せられた驚きの言葉に皆が目を丸くします。
あの不二も開眼しています。これは仕方ない。


「んーと……あ、あった!」
「俺はたけのこの里も好きだ」
「そうなんだ!じゃあ、はい、あげる!」
「いいのか、ありがとう」


無邪気に手渡されるたけのこの里をしかと受け取る手塚。
そうして少し、分かりにくいがほんの少し微笑んだ。


「「「(ああ、そうか……天然なんだ)」」」


皆が納得した瞬間だった。


「……そ、それじゃあ俺ら、行くな」
「そ、そうッスね、気をつけて〜」


青学に別れを告げ、次の目的地、立海へと向かった。