「そうだ、チョタ先輩たちは何をやるの?」
「俺たちの出し物も気になるの?」
「うん!」


まだ話題の上がっていない2年生たちへと顔を向ける麻燐。
その視線を一番に受けた鳳はにこりと笑って、


「俺たち3人はね、お化け屋敷をするんだ」
「ほえっ……お化け屋敷?」
「うん。日吉は受付だけど、俺や樺地は中で脅かす役をやるんだ」
「へえ、そうだったのか」


宍戸も興味深そうに話題に入る。


「つーか、鳳と樺地が脅かし役って……色んな意味で怖ぇな」


向日が意味ありげな視線で二人を見上げる。
その気持ちはよく分かります。


「で、どんなお化けになるんだよ」
「それはまだ決まっていません。やるからには本気でやりますけどね」
「ウス」
「ほう。樺地もやる気みたいだな」


鳳の言葉に続き、樺地も珍しく発言しました。


「なんやおもろそうやん。どうや麻燐ちゃん。俺と一緒にお化け屋敷入らへん?」
「何勝手なこと言ってんだよ眼鏡」
「だって麻燐ちゃんと一緒に入りたいんやもん」
「「「きもい」」」


皆して一斉に言いました。
そしてショックを受けている忍足は置いておき、


「麻燐ちゃんはお化け屋敷嫌い?」
「ううん、好きだよ!」
「へぇ、怖くないのか」
「うーん……そんなことないけど……でもその怖いのが楽しいって思うもん!」
「そうか。……そう言っていられるのも、今のうちだぜ?」
「おい日吉、なんかスイッチ入っとるで」


ホラーに関しては日吉の十八番ですからね。
そのことをよく知らない麻燐は、きょとんと日吉を見上げている。


「大丈夫!麻燐が怖くっても、皆が守ってくれるもん。ね、皆っ」


そう言って、3年たちの方を振り向く。
一瞬どきりとしたその場のメンバーだったが、すぐに、


「ああ、もち「もっちろんだC!麻燐ちゃんは絶対に俺が守ってあげるからねっ!」


腕を組んで偉そうに言おうとした跡部の言葉を、芥川がかっさらって行きました。


「怖かったら俺に抱きついてもいいからね?」
「本当?ありがとう、ジロ先輩!」
「うんうん。だから鳳も、めいっぱい脅かしてくれてEーんだよ?」
「あはは、ジロー先輩は立ち入り禁止にしましょうか」


あからさまな嫌味を言われた鳳は、負けじと笑顔で言い返す。
いつものことですね。


「ふふっ、チョタ先輩もジロ先輩も楽しそう!」
「「「(どこがだ……)」」」


当事者二人と麻燐以外は揃えて心の中で呟いた。
だが、麻燐が楽しそうなのであえて何も言わない。


「……ま、まぁ、誰と行くかなんてその時決めればいいだろ」
「そーだぜ。なんなら全員で入っちゃえばいいんだし」


宍戸と向日がその場の雰囲気を取り戻す。
ちょうどその時、


「あ……チャイムですね」
「本当だ。朝部活も終わりか」
「部活って言っても、何もしてませんけどね」
「そう言わんと。楽しかったんやからOKや」


OKとは言えないような気もしますが。
そんなことも気にせず、メンバーたちは揃いも揃って麻燐を教室に送り届けました。


「じゃあ麻燐、また昼休みな」
「うん!いつもありがと〜」


お礼の意味も込めて手を振る麻燐に、同じように振り返す。
そんな光景が見られるのも、麻燐の教室の前だけです。