「はい、それでは今日は学園祭の出し物について詳しく決めていきましょう」
「はーい!」
「今日も元気がいいですね、笠原さん」
「うん!」


クラスの中でも麻燐は元気いっぱいです。
学園祭の出し物についても積極的に意見を出そうとしています。


「喫茶店や展覧会は他のクラスでやるところが多いので、私たちは売店をするということでいいですか?」


先生の言葉に反対意見は出ず、次は何の売店にするかの議論になります。


「食べ物系にする?」
「でも、それだと他のクラスと被るじゃん」
「じゃあ何か意見出しなさいよー」


1年生らしく、男女仲良く主張し合ってます。
麻燐も何か良い案はないかと考えてます。


「こういうのを考えるのって難しいよね」
「うーん、そうだねぇー……」


隣の女の子と話す麻燐。
首をひねって考えてます。


「あ、そうだ!」


そして何か思いついたのか、立ち上がりました。


「どうしたんですか、笠原さん」
「あのね、皆で雑貨を作って、それを商品にしたらいいと思うの!」


麻燐はにこやかに告げる。


「それいいかも!私も裁縫とか得意だし!」
「うんうん、皆で作ったら結構な数になると思うし、いいんじゃないかな!」


女の子たちは皆賛成のようです。


「でもよー、俺たち男子にはそんなことできねーよ」
「だったら教室の飾り付けとか、他にやることがあるでしょ」


どうやら男子もできる仕事をやるということで納得したようです。


「それでは、笠原さんの意見で決定ということでよろしいですね?」
「はーい!」


麻燐も嬉しいのか、周りの賛成してくれた女の子たちに頑張ろうねと言っている。


「では、このクラスの出し物は『雑貨店』ということで、これから頑張っていきましょう」


先生が最後まとめ、ホームルームが終わった。





そして昼休み、


「「「麻燐ちゃまぁーー!」」」


麻燐がチャイムと同時に席を立つと、またそれと同じタイミングであの3人が麻燐に手を振った。


「あ、おねーちゃんたちだ!」
「………麻燐も大変だね」
「そうかな?」
「うん、朝はレギュラーの人たち、昼はファンクラブの人たち……疲れない?」
「どうして?麻燐は楽しいよ!じゃあ麻燐行ってくるねっ!」


心配する友達にそう言い、麻燐は3人の元へ行く。


「おねーちゃんたち、どうしたの?」
「昼食をご一緒しようと思って来た次第です!」
「さぁさぁお弁当を持って、一緒に食堂へ向かいましょう!」


愛子と美衣が片方ずつ麻燐の手をとる。
それに動じることなく麻燐は、


「あ、でも、皆と約束が……」


マネージャーになってから、毎日昼はレギュラーたちと過ごしていることを気にしている様子。


「それなら大丈夫です!とっくに話はつけてありますので!」


真奈が心配いらない、と笑顔で言う。


「そうなの?それなら……「ちょっと待てお前ら!」


3人についていこうとする麻燐を止めたのは、向日の声です。
ですが、その後ろにはレギュラーの面々が勢ぞろいしてました。


「ったく……授業が終わったと同時に物凄い勢いで出て行ったと思ったら……やっぱりか」


宍戸が呆れたように額を抑える。
どうやらファンクラブの行動は予測済みのようです。


「麻燐は俺たちと約束してるの!横入りはだめだC〜!」


芥川も地団太を踏んで言う。
それにファンクラブの3人は、


「聞きましたよ。放課後、演劇部の衣装を使って麻燐ちゃんと着せ替えごっこをするんですって?」
「おい、言い方がおかしいぞ」


真奈の言葉に跡部が眉を寄せて言う。


「同じことじゃないですか!酷いですわ!どうして私たちには内緒にしているんですの!?」
「私たちだって麻燐ちゃんに可愛い衣装を着せたいのに!」
「先に言っておくが、俺たちの趣味じゃないからな」


どうしても誤解されたくないので宍戸が冷静に言います。
それに便乗した向日も、


「そうだそうだ!喫茶店の衣装を決めるってだけだぜ!」
「それでもずるいですわ!私たちが衣装決めの肩入れができないことを知ってて……」
「そんなの計算してねぇよ!」


どうやら麻燐ファンクラブの人は思い込みが激しいようです。
過保護とも言うのでしょうか……。
しかし、そろそろ静かにしないと校内迷惑になりますね。
1年の教室の前で、先輩たちがそんな喧嘩をしているなんて……かなり不自然で迷惑な光景です。


「皆、喧嘩はよくないよ!」


そこで麻燐が頬を膨らませて言った。
どうやら双方が不機嫌そうな顔をしているので喧嘩と判断したようですね。


「麻燐ちゃま……」


隣に居た美衣が麻燐を見つめる。


「ほら、早く皆でご飯食べに行こっ?」


麻燐がにかっと笑って3人の腕を掴む。
それだけで3人の機嫌はMAXに良くなるので凄いと思いますが。


「そうですねっ!麻燐ちゃまの言う通りですわ!」
「麻燐ちゃまが笑っているのなら私たちは何も文句はありません!」
「ささっ、早く行きましょう!」


その態度の変わりように唖然とするレギュラーたち。
どことなく寂しげに麻燐の背中を見つめる。


「ほら、皆も早く!一緒に行こうよー!」


小首を傾げて、皆を呼ぶその姿はやはり愛らしいものです。
その周りにいる3人に少々嫉妬を感じながら、麻燐の笑顔につられて機嫌を直しました。





「………お、終わったか?」
「相変わらずこえーよ、あの人たち」
「うん、色んな意味で怖い。というか危ない」


ようやく寸劇のようなものが終わり、一安心する1年生の諸君。


「………早く卒業してくれませんかね」


麻燐の担任のクラスの先生も、ハンカチで汗を拭きながら呟きました。


「そうですね、そうしたら1年たちもリラックスできると思うんですが」


その言葉に賛同するのは同じ1年のクラス担任の少し若い先生。


「そうですね。何より、少々教育に悪いです」
「はは、ですね」


ここまで卒業を望まれる生徒も中々いないと思いますが。
様々な影響を及ぼしているのは事実なので、仕方ないですね。