次の日の朝。
部室に次々と集まる正レギュラーたち。
どのメンバーもあまり楽しそうな雰囲気ではありません。
一部以外。


「なぁ、侑士……」
「んっ?なぁんや、がっくん!」
「キモイ。お前は、麻燐の衣装……何にしたんだ?キモイ」
「なんでキモイに始まってキモイで終わるん!?」


あなたがパートナーのことをあだ名で呼ぶからですよ。
そしてその花が飛んでいるような雰囲気がより一層向日の心を不愉快にさせてしまったようです。


「跡部も無茶言うよな……あいつのせいで一睡もできなかったぜ」
「奇遇ですね……俺もですよ」
「あ、それは俺も同じです。可愛い麻燐ちゃんの為に衣装を絞り込むのが大変で」
「「(お前のその理由とは違うんだよ!!)」」


宍戸と日吉は心の中で叫びました。
普段免疫のない二人にはきつい課題だったかもしれませんね。


「おはよー皆!今日も良いお天気だね!」
「「「おはよう麻燐(ちゃん)」」」


それでも麻燐にはそんな表情を見せません。
良い先輩ですね。


「麻燐も来たところだ。早速それぞれ衣装を挙げてみろ」
「はいはいはーい!」


指揮を執る跡部に、芥川が何か言いたそうに挙手をした。


「なんだ、ジロー」
「どうせならさぁ、放課後に実際に麻燐ちゃんにコスプレを着せてみて皆で決めない?」
「はあ!?なに言ってんだよ、ジロー」


宍戸が驚いたように言う。


「だって、その方が麻燐ちゃんも選びやすそうだし、俺たちも色々と楽しめるじゃん?」
「「「(色々って……)」」」


芥川の言葉に、血の気が引く思いの皆さん。
皆さんと言っても、宍戸、向日、日吉の常識人だけですが。


「それ、ええなぁ!衣装決めもできるし、麻燐ちゃんの可愛え姿も見れるし、一石二鳥やな!」
「いいんじゃないですか?俺は賛成です」
「そうだな、放課後の方が時間もあるし、いいかもな」
「?それじゃあ麻燐もさんせー!」


この人たちのやる気の様子に、先程の3人は肩を落とし、溜息をついた。
やっぱり……としか言いようがないみたいです。


「じゃあ決まりねっ!うれC〜!」


芥川も楽しげに飛び跳ねた。


「それじゃあこの件は放課後に伸ばすことにして、この時間は喫茶店の内容について決めるか」


それからはほとんど跡部の進行で話が進みました。
まずは、喫茶店の外装・内装。
さすがに学園祭の規模から外れることはできないので、広い会議室を借りて喫茶店を開くことになりました。
内装は2・3年の準レギュラーが主に担当することになる。


「飾り付けって、なんだか大変そうだね!麻燐も手伝う!」
「その必要はないぜ。取り寄せた家具や壁紙を配置するだけだからな」
「そうなの?」
「ああ。ちゃんと喫茶店の雰囲気に合うものを取り寄せた」
「わぁ!すごい景ちゃん先輩!」
「ふははは!」
「なんか、疲れる……」


ツッコミの仕事を忘れた宍戸はさておき。
次はメニューの内容。
喫茶店ということで、飲み物類は一通りメニューに加え、軽食も出すことになりました。
ここは厨房にいる樺地や滝たちにほぼ一任されることになりました。


「滝と樺地がやってくれるなら、心配はあらへんなぁ」
「お料理作るのも楽しそうだなー。時々麻燐も手伝いにいっちゃおっと!」
「あまりつまみ食いばかりするなよ」
「そ、そんなにしないもん!あ、わか先輩にはきのこの山作ってあげるね!」
「(やっぱりそれかよ……!)」


それでも手作りかと思うと、日吉は心の中で密かに楽しみだと思うようになりました。
周りからは羨望の眼差しが痛そうでしたが。


「決める内容つったら、このくらいか」
「なんだか楽しみだなー!」
「部活ごとの出し物は学園祭の2日目だから、皆さんを飽きさせないようにしないといけませんね」
「え?こすぷれ喫茶は2日目なの?」
「なんだよ麻燐、知らなかったのか?」


向日が麻燐の顔を見て言うと、麻燐は頷いた。
そこで先輩らしく説明してあげようと、向日は、


「じゃあ教えてやるよ!学園祭はな、1日目は学級ごとの出し物があって、2日目は部活ごとの出し物でそれぞれ盛り上がるんだぜ!」
「そうなんだ!てことは、2日間も楽しみができるんだね!」
「そういうことだよ。それにね、1日目には映画鑑賞会、2日目には有志の発表があるんだよ」
「映画?」


鳳の言葉に、再び麻燐が首を傾げました。


「そうだよ。去年はミュージカルだったんだけど、今年は映画になったんだ」
「そうなんだ!どんな映画?」
「それは当日までのお楽しみらしいよ」


にこっと鳳が笑うと、麻燐はまた楽しみが増えたようで、嬉しそうに笑った。


「2日目の有志の発表って、あいつらの演劇もあるのか?」
「そうやで。今から緊張するな〜」


宍戸の言葉に忍足が返す。
どうやら演劇部の3人の人たちとやる演劇は2日目の有志の発表で行われるみたいです。


「おねーちゃんたちの劇!楽しみだなー!」
「何言ってんだよ麻燐、俺たちも出るだろ」
「あ、そうだった!」


跡部が言うと、麻燐は気付いたように手を打つ。
その様子に部室内全体が笑顔になりました。


「よーし、じゃあ時間も来たし、麻燐を送って授業だC〜!」
「かったりーなぁー」
「そう言わずに、頑張りましょうよ」
「麻燐も頑張るよ!」


そして無事麻燐を送り届けたところで午前の授業が始まりました。


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