私の恋人は、とても優しかった。
優しくて、男らしくて、私をとても大事にしてくれた。
でも、最近の貴方はおかしいの。

「精市、」

校舎の裏で見つけた貴方の後ろ姿。
そんな貴方の足元に、誰かが倒れている。

「……ああ、ごめんね。迎えに行くの、遅れちゃったね」

貴方は壊れてしまった。
私を大切にしてくれるがあまりに。
貴方はどこまでも優しかった。
それが、私だけにだと知った日は遠くない。

「………ううん」

振り向いた貴方の白いシャツには真っ赤な鮮血が花弁のように散っている。
それは、返り血で。

「……大丈夫だよ。少し気を失ってるだけ。それに、当然の事をしたまでだから。俺の、大事な大事な君の事を話してたんだからね」

だから、安心して。君は俺が守るから。
と、穏やかに微笑する貴方の表情は、やっぱり愛しい。
いくら狂ってしまっても、私の大好きな人には変わりないから。

「……ほら、笑って」

暗い表情だった私の頬に血の付いていない方の手で触れる。
私はそんな掌があたたかいのを知り、あの頃のぬくもりを思い出す。
自然と口元が緩んだ。

「うん、笑ってる方がいいよ。……愛してる」
「……私もだよ、精市」

大好きだよ。愛してる。愛しいの。
その気持ちだけは、前と変わらない。
精市がこんなことをするのも、私の為だと思うと……。
何でか、複雑だけど、嬉しいんだ。
こんな私も……十分、狂ってるのかな。





僕は君だけを傷つけないよ、だから笑って。