貴女は、居なくなった。
距離的なもので見えなくなった≠ニかならまだいい。
でもこれは違う。
居なくなった≠だ。

「日吉……」

その人が居なくなって三日後。
俺は久しぶりに学校へと顔を出した。
そこで初めに見たのは、鳳の切なそうに歪めた悲しい顔だった。

「先輩のこと……本当に、残念だと思うよ」

俺にかける言葉を頭の中で手繰り寄せている。
そんなに気を遣うなよ。
俺は、別に悲しんでなんかいない。
あの人が死んでしまったからって、涙を流したわけでもない。

「でも、先輩は……あっちに行っちゃっても、日吉の心の中で生きてるよ」
「………ああ、」

その言葉がようやく見つけた、俺への慰め文句だろう。
鳳のその言葉……俺は心の中で嘲笑った。

貴女が、俺の心の中で
生きてる
だなんて、綺麗事。

俺が愛したあの人はもういない。

だって………


俺が殺したんだから。





慰めの言葉?
そんな綺麗事が一番むかつくんだよ。


だから、慰めなんかいらない。
手にかけた感触、知ってるから。
愛しくて、愛しくて……仕方ないだろ?