「会いたい……」

綺麗なエメラルドグリーンの海を見て、俺は一人呟く。
柄にもなく…こんな綺麗な景色に溜息が出る。
この海をもう一度彼女と一緒に見たい。
もう一度見せてあげたい。

「今ごろ…どんな顔しちゅんさ…」

遠距離恋愛は辛い。
遠くにいる彼女と、俺とでは会いに行く手段が少なすぎる。
時間もない。会いに行く勇気もない。
それでも彼女には会いたい。
またあの笑顔を見たい。声が聞きたい。
電話したいけど……生憎そっちの番号が分からない。
手紙も送ろうとおもったけど、住所も分からない。
せめて姿だけでも見たいと…何度この海を見て思っただろうか。

「きらきら、眩しいさぁ…」

彼女と初めて沖縄の海でデートをした時のように。
あの時彼女は感動してたな。
こんなに綺麗なものがあるんだって。
そして言ってくれた。
好きな人と見るとさらに綺麗に見えるね≠ニ。
その言葉に俺は思わず照れてしまったけど、やっぱり好きだと実感した。

「凛ー?何してるんばぁー?」
「……裕次郎か」
「もしかして、また彼女のこと思い出してんの?」
「………」

何故あの時俺は引き止めることができなかったんだろう。
引き止めていたら、俺たちの恋も変わっていたかな?
でも引き止めたところで俺には何もできないと分かってる。
勇気がないし、そうする権利もない。
彼女は俺のものではないから。
遠距離なんか辛いと言ってしまいたい。彼女に会いたい。
会えなくても俺の愛は深まるばかりだから。

「凛、これはお前の為に言うけど、」
「………」
「死んだやつはもう二度と帰ってこないぜ」
「………」
「あの飛行機事故は、誰にも止められなかったことやっし…」
「………」
「やーのことだから、もう分かってるとは思ってるけどな」
「………」
「ほら、早く帰ろうぜ。木手が待ってる」
「………すぐ行く」

彼女との距離はいつ縮まるのだろうか。
早く、彼女に会いたい。





君が好きすぎて、
 今にも泣いてしまいそうだよ。


もう一度彼女に会わないと、
俺はそのうち、彼女と見た海の色さえ忘れてしまいそうだ。