君を閉じ込めてどれくらい経っただろう。もう数えるのも億劫になるくらいだから、きっと結構な時間が経ったんだな。君にやりたいことも、君にさせたいことも全てさせた。その度に俺の心は若干ながらも満たされた。それでも、俺は君を解放する気なんかさらさらない。そう、全く。そう言うと君はどんな顔をしてくれるだろう。きっと、この世の全てに絶望したような顔をするだろうな。その表情も、もう見飽きてしまったものだけど。それでも俺は君を手離さない。絶対に。何が起きようとも。だって俺は君が好きだったから。心の底から愛していたから。君もそうだったよな?俺が大事に大事に、触れることすらもままならないくらい大切にしてやったもんな。覚えてるだろ?ま、忘れたなんて言わせないけど。そのくらい俺は君を愛していた。本気だった。だからこれは自業自得だろ?君が先に裏切ったんだから。君が先に俺を捨てようとしたから。別に好きな人ができた?そんな理由で俺がお前を手離すわけないだろ。馬鹿。俺はもう君じゃなきゃだめなんだ。君が居ないと生きていけないくらい、俺は君のことを愛していた。のに、な。例え俺がどれだけ君を想っていても、もう君は俺のことなんか好きじゃないんだろう?俺より好きな相手がいるんだろう?それで別れてくれ、なんて、都合が良すぎる話だと思うだろう?だから、君を閉じ込めたんだよ。安心していいぜ?俺はもう君のことなんか好きじゃない。愛してもいない。……ま、そんなこと言わなくてももう身体に染みついてるか。あれだけ俺に甚振られて、傷つけられたもんな。そんな姿じゃ、もう二度と人前に出られないかもな?そうだよ。俺はもう君のことなんかどうとも思っていない。いやむしろ。

大 嫌 い な ん だ よ。

俺のことが好きじゃない君なんか。俺のことを愛してくれない君なんか。別の奴を好きな君なんか、俺の好きな君じゃない。俺の愛しい君はそんなことしない。俺を捨てたりなんか。俺から離れようとしない。だから、君はもう俺の愛した君じゃない。そうなんだろう?だったら俺に君を返してくれよ。あの、俺の後ろをひっついていた君を。俺だけを見て、笑ってくれた君を。返してくれよ。ほら、今すぐに。……できないんだろう?だったらもう、君は俺の望む君じゃない。だから、どうなったって俺の知ったことじゃない。このまま何もない部屋で泣き叫ぼうが狂ってしまおうが…死んでしまおうが。俺はもう、どうとも思わないんだよ。君はもう俺の好きな君じゃないのだから。もう帰ってこない君の幻影ばかり追い続けるから。俺の好きな君は死んだんだ。ずっと昔に。あの笑顔ももう二度と見ることができない。だってもう死んでしまったのだから。ああ、あの頃の愛しい君に会いたい。会いたい。会いたい。会いたい……。別にこれは俺の我儘じゃないだろ?普通の感情だろ?愛した君に愛されたい。そう思って何が悪いんだよ。なあ、頼むから。頼むからもう一度、あの時の笑顔を見せてくれよ。もう一度。


………俺を、愛してくれよ。





俺は、俺を愛してくれる君を愛していたんだ。

答えたくないのか、答えられないのか。
今日も君の返事は聞けないまま、今日が終わっていく。