君はいつもそうだよね。
にこにこ笑いながら、俺の元へ来て。
とても愛想の良い表情で色々なことを話して…俺の心を奪っていく。
俺はそんな君が好きだよ。小さくて愛らしくて。
まるで小動物のような君に淡い恋心を抱いて……柄にもなく、君に見惚れてしまう。
ほら、今日も朝から君は俺の元へ駆け寄ってくる。

「おはよう、幸村くん、真田くん」
「ああ…おはよう」
「おはよう。元気だな」

君の穏やかな挨拶は俺の隣に居た真田にも向けられた。
………いや、違うんだ。
俺は気付いてしまったんだ。君の本心に。

「真田くん、今日の朝もいっぱい怒ってたね」
「うむ…赤也があまりにもたるんでいたからな」

君が俺の元に来てくれるのは、俺の傍に真田が居る時だけだと。
君が本当に話したいのは……俺じゃなくて真田なんだと。
気付きたくもなかった。だけど、気付かないはずがない。
君の瞳は……俺よりも…たくさん、真田を見つめているのだから。
そのことを知ってから、俺は自分でも情けない顔をしながら二人を見ていると思う。
なんて勘違いな恋をしているんだろう、って。
君は俺を介して真田とコミュニケーションをとっているだけだというのに。
俺はといえば……そんな君の心に気付かず、初めから報われない恋をしていた。

「ふふっ、でも、部活に真剣な真田くんの姿、素敵だよ」
「……褒めても何も出んぞ」

二人の会話に、せめてもの微笑を浮かべて参加している俺。
本当はお邪魔だと思われていると知っている。だけど……簡単には離れられないよ。
俺の心はすでに君に奪われている。君を求めている。
虚しいだけだと分かってる。それでも……君が大好きなんだ。

「幸村くん?顔色悪いけど…大丈夫?」
「……平気だよ。俺のことは気にしないで」
「無理はするなよ、幸村」

今にも消えそうな笑みを浮かべて……俺は小さく頷く。
そして再び会話を初める二人を眺めて、今にも泣きそうになるのを抑える。
心配しないで。俺は二人の邪魔なんてしないよ。
俺は君のことが大好きだし、真田は大切な仲間だからね。
だから、この関係を壊したりしない。俺がこの想いを捨ててしまえばそれで済む話。
君のその柔らかい笑顔が見られるなら、俺は自分の気持ちなんて無視できるよ。
それくらい俺は君のことを愛しているから。……いや、愛してたから。
だから、

「ごめん、やっぱり俺、保健室行くよ」


二人に心からの祝福を。





気付いたんだ。
君の瞳が、僕を見ていない事を。


君を忘れるにはまだ少し時間がかかるだろうけど。
そのくらいの我儘は……せめて、許してくれるよね?