「っらぁ!」
「、げほっ…!」

貴方は、最近私に暴力を振るうようになった。
前まで…大切に扱って、触れることすら稀だったのに。
拳や膝、踵でよく私を殴ったり蹴ったりするようになった。
鬼のような形相で。
泣きそうな目元を吊り上げて。

「何回も言わせんな!俺以外の男と、話すなって言ったろ…!」
「ご、めんなさい……亮、ごめん…」
「お前は、俺のことが嫌いなのかよ!?」

けほけほと咽ぶ私は、涙交じりで謝る。
そうすると亮も抑えられない気持ちに顔を切なくゆがませ、しゃがんでいる私の肩を掴み言う。

「ちがうよ…大好き、だよ。私、亮が世界で一番好きだよ…」
「だったら、二度と俺から離れるな…!」

低い声でそう呟くと、私を強くきつく抱き締めた。
蹴られたところが締めつけられて、苦しい。
亮がこうやって怒るのは、私が他の男の人とよく喋るから。
初めはこんなふうに嫉妬することはなくて、少し拗ねている様子だった。

「そうすれば、こんな殴ったりしねえからさ…っ」
「…うん……」

それでも、私は、もっと、もっと、亮の愛を感じたかった。
拗ねている亮を見るのも可愛かったけど、こうやって怒る亮も好きなの。
だから私ね、亮の視界に入るように色んな人に話しかけたよ。
そうしたら…亮はこうやって、自分の愛を私にぶつけてくれるでしょう?
亮の怒り、私の傷の痛みの数だけ亮が私を愛してくれたという証拠。

「俺は……お前だけを、愛してる…」

亮が暴力を振るうことは、想定内のこと。
痛みが愛へと変わる、不思議な感覚。
それが嬉しいの。
だから私はきっと、まだまだ亮を嫉妬させる。
亮の怒りと嫉妬に狂った表情を見たいから。
激しく愛をぶつけて、後にこうやって締め殺されるくらい抱き締めてほしいから。
これは私の我儘なのかな?
私によって狂った亮を、私は一生をかけて愛するから。

「私も……愛してる、」

狂ったあなたごと。私のものだから。





先に狂ってしまったのは貴方じゃないんだよ。

だからね、安心して狂っていいんだよ。