「ねぇ蔵ノ助、私のこと好き?」 「……ああ、好きやで」 私がそうやって聞くと、あなたは笑顔で答えてくれる。 綺麗な瞳を細めて、柔らかな髪を揺らして答えてくれる。 私は、それが嬉しいよ? あなたのその顔を見るだけで、こんなにも心が躍るんだもの。 ほら、こうやって何もない公園の道を一緒に手を繋いで歩いて。 私、すごく幸せだなぁ。 「今日は日差しが気持ちいいね」 「そやな……。まるであの時みたいや…」 「ふふ、」 あの時。 きっとそれは、私が蔵ノ助に告白した時だ。 あの時も今日みたいな暖かい日だった。 日差しがぽかぽかしてて、お互いの想いが実った事に私も貴方も頬を濡らした。 あの時が一番幸せだったな。 ……あ、違う。あの時じゃなくて、今こうやって二人で居られることが一番幸せ。 「ね、蔵ノ助」 「ん……?」 私は立ち止まって、蔵ノ助を見つめる。 彼も同じように止まって私と向き合った。 私は微笑んで、 「あの時みたいに私を抱き締めて」 「……なんや、急に甘えて」 「お願い。私の我儘きいてよ」 「はは……ほんま、自分勝手なやっちゃなぁ」 蔵ノ助は私を抱き締めてくれた。 優しく両手で。私の身体をしっかりと。 「蔵ノ助、愛してる」 「俺もやで。ほんま…………殺したいほどにな」 優しさは偽りでいい。 愛情は憎しみでいい。 私があなたを愛しているから。 私があなたの傍にいたいから。 「ぅあっ………が、」 背中に突き刺さったナイフが教えてくれる。 自分の犯した罪の重さを。 それでも私は謝ったりしないの。 だって私は幸せだったから。 ようやくあなたの隣になれたんだから。 「死んで…………あいつに詫びろや」 倒れる私を憎悪の目で見下して。 ……私はいつの日か、こんな事になるとは思っていた。 あなたの愛しい人を目の前で殺して。 あなたに愛を強要した私にはそれがお似合い。 それでもね、信じて? 私は本気であなたを愛していたの。 あなたを手に入れる為なら、あなたの想い人を殺してしまう程に。 「愛、して……る、…くらの…す…」 もうあなたの顔、自分の涙で見えないよ。 最後くらい…貴方の顔をじっと見たかった。 刺される前に見たあなたの顔は、涙を我慢している顔だった。 愛が全てを奪っていく、矛盾した世の中で。 あなたはこれから私を何度恨んで生きて行くんだろう。 あなたが私を忘れない限り、私の愛は永遠に続いていく。 |