「…ぐふっ」

あなたはいつも私を傷つける。
本当に冷めた目で。今にも……私を殺してしまいそうなほど。
あなたは私が嫌いなの?
何度も心の中でそう思った。
いつもいつも……殴られながら、そう考えてた。
これでも私たちは、恋人という関係にあるのだから。

「あ、かや……」
「っまじ、むかつく……」

私が悪い事をしたのか、ただの八つ当たりか。
理由は分からない。
ただ、いつもは明るく気さくな赤也の姿がないことだけが事実だった。
太陽みたいに吸い込まれそうな目も。
人懐っこそうに甘える声も。
この時ばかりは消えて、まるで別人を匂わせる。

「ぅぐっ」

赤也の拳が、私の頬にあたり口の端が切れた。
血が床に飛び散る。
私は痛いのも、泣きたい気持ちも我慢して……黙っていた。
だって、私は赤也が好きだから。
愛しているから。
ほら……赤也が、自分の拳についた血を見て、震えてる。

「っ……あ、」

そして、先程まで冷たかった瞳がいつもの赤也のものになる。
私の大好きな優しい目。

「お、おい………大丈夫、か…」

あなたは卑怯だよ、赤也。
私があなたのことを嫌いになるのなんて……先程の行動で可能なのに。
今度は壊れ物を扱うみたいに抱き締めて、優しく囁いてくれる。
我に返ったあなたはすごく優しい。
どうして?
どうしてくれるの……私の心はあなたでいっぱいだよ。
こんなに酷い事をされても、あなたの事嫌いになれないなんて。

「……わ、たしは大丈夫だよ、赤也…」
「っごめん……ごめ、なっ……」
「だから、泣かないで……」



あなたのことが嫌いになれない私も、
もしかしたら……狂ってるのかな?





好きなんだよ。
好きすぎて、愛しているんだよ。


たとえあなたが私を殺そうとしても
私があなたのことを嫌いになることはきっと、あり得ないわ。