「お前とはもう、この世界で愛し合うことはできないな」

俺は呟く。
目の前の愛しい彼女に。
……彼女、と言っても、そう思っているのは俺だけだろう。
彼女が俺を嫌っているのは知っている。
俺が彼女を監禁してしまった時から、ずっと。
彼女の声を聞いていない。
聞くと……俺はきっと俺じゃなくなる。
彼女の口から「嫌い」の一言が出るだけで、
俺はきっと壊れてしまう。

「この世は矛盾だらけだ。俺はこんなにもお前を愛しているのに……」

彼女は首を振るばかり。
俺が何を言っても……。
彼女は俺の思い通りにはならない。絶対に。
だったら…もう、こんな世界には用はない。
こんな人生いらない。
彼女に愛されない人生なんて……。
必要ない。

「今度は、別の世界で愛し合おう。…だから、お前は先にいっててくれ」

俺は彼女の首へ手を伸ばす。
これからされることは、きっと彼女も予想ができているだろう。
彼女は力無い瞳に涙を溜めて、精一杯の力で首を振った。

「泣くな。…心配しなくていい」

俺は、久しぶりに彼女に向かって微笑んだ。
俺の手に力が入る。
すると彼女は苦しそうに目を堅く閉じ、喉を強張らせた。
……最後くらい、口のガムテープを剥がした方がよかっただろうか。
いや、それはできない。
俺は彼女の声を聞くのが怖いみたいだ。
こんなことをして……彼女に否定されてもおかしくはない。
それでも、俺はそれに恐怖している。

だら、

彼女の全身の力が抜けたのが分かった。

「……………俺も、すぐ行く」

そうして俺も自らの命を絶った。
これから行くであろう……自分の末路を望んで。
きっと、俺の望み通りになる。
だからもう……あっちでは、泣かないでくれ。


君は天国へ。
俺は地獄へ。





言わない事がせめてもの優しさだと信じて。

こうでもしないと、君は自由になれない。
俺から、逃れられないから。