嫉妬が何も生まないってことは知ってた。
あんなの、自分の気持ちが燃え上がるだけで、
周囲が気付いてくれるわけでもない。
結局はただの自分への言い訳だったんだ。
あの人に、自分から近づけない自分への……。

「なによーっ、ブン太の嘘つき!」
「別に嘘なんてついてないだろー?」
「だめ!私の心は完全に傷つきましたー」
「あー悪かったよ。ほら、これ部活の合宿ん時のお土産。これやるから機嫌直せよ」
「もう……こういう時だけ都合いいんだから」

あの人の彼女は羨ましいな、とか。
私もああやってあの人からプレゼントが欲しいな、とか。
そんな嫉妬ならまだ可愛いものだった。
私のはそうはいかない。
あの人の視線の先に居る女が、憎くてたまらなかった。
憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。
殺してやりたいほど……。
どうしても抑えられなかった。
この……汚くて、おぞましい感情を。
だから私はあの人を呼び出した。

「……どうしたんだよ、急に」
「うんと……少し、丸井くんと話がしたくて……」
「そうなのか?別にいいけど……できれば早くしてくれよ、今日はちょっと約束があるから」

知ってるよ。
あの子と一緒に帰るんでしょう?
クラスで堂々と約束してるんだから……知らないはずがないのに。

「それで、どうしたんだ?相談事か?」
「うーん……相談っていうか……お願い事なんだけど……」

貴方を見るだけで、こんなに感情の抑えが効かなくなる。
貴方を手に入れたい。傍に居させたい。
でもそれはもう叶わない事だから。
だから、ね?
私……良い事思いついたの。
これなら、私も満足できるし、あの子も幸せにさせられない。

「あのね、丸井くん……私ね……






 貴方に死んでほしいの」

倒れこむ貴方。
ああ……暖かい。
ようやく触れることができた。
それだけでこんなに嬉しいの、胸がときめくの。
貴方は知らなかっただろうけど……。
ずっとずっと、貴方の隣に居たかったんだよ。

「っふふ………全員、いなくなっちゃえばいいんだ」


嫉妬心。
この気持ちを知った時から
失う覚悟は、とうにできていた……。



さようなら、愛しい人。





嫉妬がどうしようもないことは知ってる。
どうしようもないからこそ人を惑わすんだ。


さて、次はあの子を殺しに行かなくちゃ。