「私、貴方の事好きだよ」
「世界で一番愛してる!」


いつも口から出ている、君の言葉。
一日に一回以上聞いている。
その全てが、俺に向けられているものではないけれど。
俺に向けられるその笑顔。
俺は、どんな顔で見つめているんだろう?

「慈郎っていつも寝てるよね」
「……うん〜、寝るの好きだからね〜」
「そっか。私、慈郎の寝顔大好き!」
「ありがと〜」

俺の顔を覗き込む、君の笑顔。
俺は直視できていない。
それでも君は、そんな俺の様子を気にした様子もなく。
ただただ、俺の顔を見て笑ってる。

「慈郎、好き」
「うん、俺も」

君の偽り。
俺の真実。
君の言葉。
俺の態度。
どれも噛み合わなくて。

「じゃあ私、教室戻るね」
「……いってらっしゃーい」

そうして君は、さっきと同じ言葉を別の男に吐くのだろう。
俺のあの言葉は、君にしか使わないというのに。
好きなんだ。
他の誰よりも、君だけを。
だけど、君はそうじゃない。
俺の事を愛してくれていない。
それと同じように、他の男も。

「………本当、馬鹿みたい」


「慈郎、好きだよ」


何よりも嬉しい言葉なのに。
君の口から吐かれる言葉は、どれもデタラメに思えて。

何一つ、信じることができない。





君の言葉は世界で一番信用できないものだ。